透李がゆるふわな本性を見せてから暫く、透李はあむと2人きりの時だけ穏やかに笑い素で話してくれるようになった。
前の透李もクールでかっこよかったし、やめろ、と手を払われるのもちょっと楽しんでいたのだが、当初の目的通り、可愛い笑顔は見れている。…イメージとはだいぶ違ったが。


そんな彼を朝起こし、一緒に朝食を摂り、仕事をする。といつも通りの穏やかな生活が今はとても楽しい。そう思いながらカウンセリングルームまでの道を歩いていると、少し先に透李が見えたので、声をかけようとする。

「透李っち──」

しかしその声は途中で消えた。

透李の隣には自分の妹の蓮糸 イリスがいて、イリスが背伸びをして、透李の軍服を引っ張っている。まるで、キスをせがむかのように。当の透李はいつものポーカーフェイスを少し崩している。2人は一言二言かわすとすぐ離れたが、同時にあむを見つけ明らかに動揺し、距離を取った。
確信した。

2人はあむになにか隠している。

それも、姉に、彼女に知られたらまずいことを。

「お姉ちゃん」

「あむ」

2人がぎこちない笑顔(透李は完全に苦笑い)で自分に声を掛けてくるが、あむは急いでカウンセリングルームに入り、鍵をかけた。2人に言わなくてもわかるように、ガチャ!と音を立てて。カウンセリングルームの自分の席に置いていたスマホに2人から交互に3、4回着信が入ったが、全て無視し、仕事を再開した。