外出の許可が出た、とは言っていたが、特にどこに行くかは決めていなかったようで、透李はあまり話さず炎の国を一緒に散歩した。元々透李は旅人だし、こうしてあまり見た事ないものを見るのも好きなのかもしれない。…なぜあむを連れているかは分からないが。

「そろそろ帰路に就くか、黄昏の時だ」

夕方頃になり透李がそういって、突然あむの手を握った。突然のことに驚いて、その手をはらってしまう。

「あっ……」

「……」

透李は払われた手をしばらく見ていたがやがて驚いた表情であむを見た。
でも、そんな顔をされても困る…。付き合ってもいないし、好きでもないのになんでそんな行動に出るのか分からない。

「弄ばないでくださいっす…」

「は?貴様、何を馬鹿げたことを──」

「この前おらちのこと振ったのに、なんでこんな…デートとか手を繋ぐとか、思わせぶりなことするんすか!」

あむが叫んで悲痛に歪んだ顔で透李を見る。透李は何故か不思議な顔をし、首を傾げ、問いかけてきた。

「我と貴様は契りを交わしたではないか?」

「はい?」

わけがわからない、告白についてはYESもNOも貰っていない。

「我が意を解せなかったか、貴様にも分かるように言ってやる、我と貴様は今付き合っているだろう?」

「いや、意味は分かりましたけど!返事もらってないじゃないっすか!好きとも嫌いとも言われてないし…」

「嫌いに見えるなら貴様の目は節穴だと言った筈だ、貴様からの好意を受け、我は普通の人間と子を成すつもりはないとも、分からなかったか?」

「……あれ、OKの返事なんすか!?」

「その通りだが?我からしたら甚だ疑問でしかない。何故好意を受け好意を返した相手に触れ、拒否されるのか」

「わっかりにくい…」

あむはそういって、不思議そうな顔をしている透李に笑いかける。そのまま、透李の手を取って歩き出した。

「早く帰りましょ、透李っち。暗いから気をつけて下さいっす」

よかった。付き合ってたんだ!あむは嬉しくて足取りが軽くなる。
そのまま歩いていると、スルッと一瞬手が外れ、透李の方から指を絡めて来る。いわゆる恋人繋ぎだ。驚いて透李を見たが暗くて表情はよく分からなかった。

王宮に着く前に透李は手を離し、少し庭を見てから戻ると言って、王宮に入る時間もずらした。付き合ってることを悟られないようにしてるのかなと思いつつ王宮に入ったら入浴が終わったらしい緋女とすれ違う。すれ違いざまチトセに

「おかえりなさいませ、楽しかったですか?」

とからかうような声で聞かれて、バレてるじゃん…と思った。