草ヶ谷 透李は不機嫌だった。
旅人として偶然炎の国にきて、商業国だというから覗けば……これだ。

草ヶ谷 透李の目の前には随分と澄ました赤い軍服を来た女性とその女性の数歩後ろで自分を品定めするようにじっと見つめてくる長身の男。
聞くと女性はこの国の王子でこの男は執事長であり、彼女の専属執事らしい。
女性で王子、とか、随分若く見えるがもう執事長ってどういうことだとか聞きたいことはいっぱいあったが、まずはこの状況だ。

「君がお父様の言っていた新しい護衛だな。どんな屈強なやつが来るかと思っていたが……随分若いな」

女性……この国の王子、海神 緋女が不思議そうな顔を向けてくる。透李はため息をついて高らかと言う。

「我が名は草ヶ谷 透李!神の加護を持ちし者!この地を楽園至らしめんとして現れた!よろしく頼むぞ、貴様ら」

目に見えて二人の表情が固まった。