空梅雨の末に、急に暑くなったせいか、
僕は3日前から体調を崩して入院していた。
歳のせいもあるだろうが、この年齢で悪い所がない人の方が珍しい、

「おはよう、お父さん、身体の調子はどうなの?」

娘は子供を義母に預けて、
毎日お見舞いに来てくれていた。

「あぁ、大丈夫だ。今日は少し調子が良いみたいだ、
優樹菜、今日は何日だ?」

「7月4日だよ」

あと3日か、、もう今年が最後になる気がしていた、、

「7日に外出したいんだ、それまでに退院出来なければ外出の許可をもらってくれないか?」

娘は少し考えて思い当たったのか、
「美幸さん? まだ諦めてなかったの?」

去年の七夕は、体調の不安から一人では行く事ができなかった、娘に送り迎えをしてもらった経緯から全てを打ち明けていた。

母親の事が大好きだった娘には到底受け入れられない話で、非難を浴びるのを覚悟していたが、
"お父さんの人生だから"と言って、意外にも寛容で協力してくれたのだった。

「諦めるとか諦めないとかの問題じゃないんだ、
7月7日は、恋の命日みたいなもので、あの場所に赴いて想いを馳せなければ明日には進めないよ」

「もう6年も前の約束でしょ、美幸さんも忘れてるかも知れないよ、、
歳を考えるとお父さんと同じで、元気でいるのかもわからないし」

忘れるわけがない、、
いや忘れられないからこそ、2人がどんな幸せな人生を歩んでも40年以上も絶ゆることなく燻り続けていたのだ。
彼女は、きっとしがらみから抜け出せないでいるのだろう。

「会える会えないは運命だ、行けば自分を納得させられる」

「そうわかった、先生に聞いてみるね」