立春を過ぎても春はまだまだ遠い、
日差しは弱く、校舎の間を吹き抜ける風も冷たくて鋭い。
其処は校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下で、授業で教室を移動する際に使われている。わざわざ階段を使って上下の移動をしなくても、2階から隣りの校舎の2階に直接行ける構造になっていた。
昼食を終えた、2人の女子生徒が手摺に掴まって楽しそうにお喋りしているのが目に入った。
「なんでギャラリーがいるの?」
「ごめん、さっき迄はいなかったんだよ」
林さんは、両手を合わせ拝みながら言い訳をした。
「この寒い中、敢えてこんなとこでお喋りするかな、
きっと、告白シーンの目撃者になりたいだけだよ」
今日は、学校のあちこちでこんな告白がされているのだろう。
彼女達は、イベントの目撃者になって後で面白おかしく噂話をしたいだけだと思う。
その彼女達の向こう側、反対側の校舎の出入り口付近に立って、こっちを見ている女の子が目に入った。
「白河さん?」
「そう、美幸ちゃん。一年生の時一緒のクラスだったでしょ」
「うん、白河さんとは天文部でも一緒だよ」
「そうだったね、、良い子なんだから、泣かさないでよ。
はい、君嶋くん、頑張って!」
林さんはそう言いながら、僕の背中を両手で押し出した。
「なんで、僕が頑張るの?」
どんな子だったか、、歩きながら記憶を辿り彼女の事を思い出してみる、
あまり目立たない子だったのだろうか、一年間同じクラスにいた筈なのに特にこれといった思い出はなかった。
天文部と陸上部を掛け持ちしていた僕は、天文部の活動には余り積極的に参加していなかったのもあるかもしれない。