「僕も同じさ、、やっぱり、
お互いが相手からの電話を待ち続けて自然に消滅したんだね」
「えっ、圭くんも私からの電話を待ってたの?」
そうだ、どちらかが、
たった一本の電話を掛ければ、未来は変わっていた
40年越しの答え合わせは、
二人を後悔させた。
「あの本を読んでから、私も圭くんの事が頭から離れなくなっちゃった、、
圭くん、圭くんは今の私をどう思ってるの?」
この問いには、慎重に答えなければいけない。
彼女をその気にさせて、家庭を壊さないように。
「本に書いた通りだよ、君の幸せを確認できれば、僕はそれで満足なんだ」
「、、圭くん、私は、、本当は幸せじゃないんだ」
「幸せじゃないの?」
そういえば、彼女の家庭の話は何も聞いていなかった。
彼女が"人並に幸せ"と言った時点で、優しい旦那さんと可愛い子供達に囲まれて平穏に暮らしていると、勝手に解釈していた。
何をもって幸せと言うかは人によって違うと思う、金銭的な事か、夫婦の事か、それとも子供か、
その全てが上手くいってなければ幸せを感じない人もいれば、どれか一つで満足する人もいる。
「何か、悩みがあるの?」
「うん、圭くん、、会って話がしたいんだけど、だめ?」
それは難しい、良くも悪くも後戻り出来なくなる。
「美幸ちゃん、何の悩みか教えてくれないか?」
「主人のこと、、もう夫婦関係は破綻してるの」
どうするべきか悩む、もし深入りして話が拗れると収拾がつかなくなる。
「、、圭くん、相談に乗って欲しい、、」
また思い出してしまう、
何もしてやれなかった40年前、、悩み、苦しみ、不安で押しつぶされそうだった彼女の手を僕は図らずも離してしまった。もう二度と傍に居て守ってやる事が出来ないと悲しみに暮れた。だから、、
今こうして助けを求める彼女を、どうして見捨てることができるだろうか、、
「、、分かった。会って話を聞くよ」