いっぱい泣いてしまった、、

こんな顔は誰にも見せられない、
俯き加減に歩いて、娘の車に急いで乗り込んだ。

「遅かったね、お母さん大丈夫?
    何か酷いこと言われたの?」 

泣き腫らした私の顔を見て、奧さんに罵声を浴びせられたと、心配そうに娘が気遣ってくれた。


「違うの、奥さんの話を聞いて、胸がいっぱいになっちゃった、美咲、皆んな優しいよ。圭くんが彼女を選んだ理由が分かる気がする、確かに、私と彼女は性格が似てるけど、私には無いものを彼女は持ってるから」


「奥さんは、何を持ってるの?」


「彼女は、圭くんの優しさに素直に甘える事ができるから、そんな彼女に圭くんも精一杯の愛情を持って応えてたんじゃないかな、、
私にはできなかった、恥ずかしくて言えなかったのもあるけど、我儘になって彼に嫌われるのが怖かったから」


「お母さん、臆病なとこあるよね」



奥さんは、私に対しても、親切で優しかった。

いくら圭くんが望んだ事とはいえ、私だったら夫の元カノにあそこまで優しく接することはできない。

きっと嫉妬心が先にきちゃうと思う。

それに、それに圭くんが、そんなに私の事を考えてくれてたなんて、、嬉しい

色んな人の思いが頭の中で交錯して整理がつかなかった。

一回リセットして考え直したい。


「ねぇ美咲、スピッツの楓かけて」

「いいけど、なんで?」

「圭くんがね、小説を書いてた時に、よく聴いてた曲なんだ、私も聴いてみたい」

「はいはい、ちょっと待ってね」