『あっ、こんにちは、あの、、白河です』

毎週のように電話で挨拶を交わしてたから、お母さんは直ぐに気づいてくれました、

『白河さん? まあまぁ、こんな遠く迄よく来てくれたわね、圭悟居るから上がって』

『い、いえ手紙だけ今ポストに』

お母さんは、私の言葉と沈んだ顔を見て何かを察したと思う。

『どうしたの、 圭悟が何かひどい事した?』

私は悟られない様に誤魔化すのに必死だった、

『いえ、昨日電話で喧嘩しちゃったんです。だから手紙を書いてポストに入れて帰ろうと思って』

すると、お母さんは少し考えてから、私が入れた手紙をポストから取り出して私に返した。

『白河さん、それはだめ、今圭悟を呼んできてあげるから自分の手で渡しなさい』

それが私には、
"お互いの気持ちがすれ違うから自分の言葉で伝えなさい"って聞こえた。
お母さんに叱られて、
その優しさに触れた気がしたんです」


「そう、そんな事があったの、彼のお義母さんは私にもすごく優しくしてくれたわ」
「ここの家族は皆んな優しかった、彼もそんな人達に囲まれて育ったから、自分より人の事を先に考えるようになったのね」


「そうだ高瀬さん、スピッツの"楓"って歌知ってる?」

「題名は聞いた事ありますけど、歌は・・」

「彼が小説を書いてる時にね、何度も何度も聞いてたわ、きっと貴女の事を重ね合わせてたんだと思う。
貴女にも通じるものがあるんじゃないかな、一度聴いてあげて」


そう言えば、圭くんが言っていた。

人は、歌の主人公が自分と境遇が似ていると重ね合わせて聞いてしまうって、、

「はい、ありがとうございました。」

私は何度も頭を下げて、彼の家を後にした。