この物語を進めるためには、
僕と彼女の出会いから別れまでを語らなければならない。


どこにでも居そうな昭和の終わりの高校生の恋愛話に、小説のような感動や可笑しさはない、

少々退屈な話になるかもしれないが、それを知らなければ、この物語の後半に訪れる胸が熱くなる程の心の昂りを、あなたにお送りする事が出来ないからだ。

ただ純粋に好きとういう感情が勝って、他の欲望など皆無な学生時代の恋愛は、人の心に深く刻み込まれ生涯忘れる事はできない。

青春時代にしか味わえない甘くて切ない経験、、

だが、38年も昔の事となると僕の記憶も曖昧で、
それが本当にあった事なのか、
それとも単なる僕の妄想なのか、
その判断が難しかった。

僕らが夢見ていた未来は、夜空に一等輝くシリウスのように明るくて、、
そして遠かった。

あの時、二人で見た科学館のプラネタリウム、
満天に輝く星を繋いで星座を描いたように、、

心の片隅に散らばった記憶のカケラを拾い集めて、
物語を紡いでみたい。



あれは、たしか....




1982年(高校二年生)  春

僕が昼食の弁当を食べ終わるのを待っていたかように、
クラスメイトの女の子に声を掛けられた。

「君嶋くん、ちょっと時間いいかな、私と一緒に来てくれる?」

彼女の名前は、林 美智子。
学級委員長で、人の世話を焼くのが大好きな子だった。

昼休みは仲の良い友達と、解放された体育館でバスケをして遊ぶのが日課になっていた僕は、楽しみな時間を取られることに不機嫌な顔をして見せた。

「何? 友達とバスケやりたいんだけど、、」

「そんな事言わないでよ、
 今日が何の日か知ってるでしょ」