「もちろん人によって考え方は違うと思うけど、愛にも色々あって簡単には説明できないよ、

でも私が理想とする究極の愛は、たとえ相手が気づかなくても与え続ける愛、見返りを期待しない、
 母親の子供に対する愛はそれに似てると思わない?」

「でもさぁ、親子の場合は、それでも良いと思うけど、男女の関係だと凄く哀しい気がしない?
 こんなに愛してるのに、何でわかってくれないんだって」

「圭くん、自分が愛してるからって相手に代価を求めて駄目だよ、相手に見返りを求めた時点で愛は成立しない。
自分が与え続けた愛に、やがて相手が気づいて自分に愛を返してくれる。
そこにやっと本当の愛が生まれるんじゃないかな。

だから男女の理想は、恋に始まって、やがてそれが愛に変わる、精神的にも肉体的にも結びついて愛が深まる、更に年月を重ねた二人は究極の愛を手に入れるの、互いを支え合うように手を繋ぐ老夫婦だよね。
もうそこまでいくと肉体的な欲求なんて無いから精神的な結び付きが強くて、ほらよく互いの存在を問われて空気みたいって言うじゃない、いつも近くに居て無くてはならない大切なものだよね、
 私もそうなりたいなぁ」

「難しいね、じゃあ今の僕たちは、恋なの?
 それとも愛?」

「まだ恋かな、圭くんが手を繋いでくれたり、抱きしめてくれると、胸がキュンってするから」

「じゃあ、これから愛に変わると思う?」

「私を抱きたいって事?」

たまにドキッとする事を言う。

彼女は悪戯な子供の様な目で、僕の顔を覗き込む。
反応を見て楽しんでいるのがわかる。

「もうちょっと大人になったら考えてみるね」


恋から愛に変わる時、つまり、
それは子供から大人に変わる時なのだろう、恋人達は最大の試練を乗り越えなければならない、

そんな気がした。