僕の歩く動きに合わせて、ギャラリーの視線が追いかけてくるのを感じていた、
その横を通り過ぎる時、”クス”って笑われたような気がして、
思わず「見せもんじゃないよ」って口走ってしまった。

僕の言葉に驚いた彼女達は、いそいそと校舎の中へと消えて行く、

優しく言ったつもりなのに、
どうも林さんの様にはいかない、彼女と違って僕の嫌味は好かれないらしい。

二人の距離が近づく、目を伏せていた彼女は顔を上げて僕に視線を向けた。

「君嶋くん、今、彼女達に何か言わなかった?」
「うん、こんなとこにいると風邪引くよって」

 嘘だけどね、

「君嶋くんは誰にでも優しいね」

彼女は、僕より頭一つ分背が低い、160センチは無いぐらいか、

髪はショートで、少し多目の前髪から覗く瞳と、堅く結んだ口元が知的な芯の強さを感じさせる。
声のトーンも低くて、明るく活発なイメージよりも物静かで文学的な印象が強かった。

「ごめんね、休み時間取っちゃって」
「大丈夫だよ、気にしなくていいから」

 彼女を励ますつもりで、そう言った。

「あのね、、、」

緊張のせいか今にも消え入りそうな声で、
必死に気持ちを伝えようとしていた。

「一年生の時からずっと君嶋くんの事が好きでした。良かったらこれ貰って下さい」

彼女はそう言いながら、後ろ手に隠していた手紙とチョコレートを僕の前に遠慮がちに差し出した。

緊張と寒さに悴んだ震える手、想いの全てが込められた手紙とチョコ、

「ありがとう」

彼女の手からプレゼントを受け取ろうとした時、少し手が触れただけで、ほんのり顔を赤らめる彼女が、僕の目には小さく儚く映っていた。

一体どれくらいの勇気を振り絞っているのだろうか、
僕は、昔から女の子のこういう姿に弱い、、
好き嫌いの感情を抜きにしても、抱きしめて"大丈夫だよ"って言ってあげたくなってしまう。

「手紙読んでね、また返事下さい」

彼女は、それだけ言うと振り返って行ってしまった。