「この甘さじゃないんだよなぁ、俺が求めてるの」
「シロップが甘いもんねぇ、ザ砂糖って感じ」
「そうそう」
「カラオケせっかく来たんだから、秋光の歌聞きたーい! 歌ってよ」
よくよく考えてみれば、秋光とカラオケに来たことはなかったなぁ。秋光が嫌そうに首を振ってるのを見て、今日はなんだか嫌そうな顔ばっかり見てるなと思った。
「一曲! お願い」
「光奈が歌ってくれたらいいよ」
「いいよ」
可愛くてほどほどに色気がある曲。脳内で必死に検索しながら、曲名を探る。歌に自信があるわけではないけど、少しでも可愛いなんて思ってほしい。
私が歌った曲は、今流行りの恋愛ソングだ。君が好きで好きでしょうがないみたいな。チラチラと秋光の様子を伺いながら歌ったけど、ニコニコと聞いてくれたからきっと悪いもんでは無かったんだと思う。
「じゃあ次は、秋光の番、はい」
「笑うなよ」
「笑わないよ」
秋光が選んだ曲は、意外な曲で。爽やかな歌を歌いそうな見た目とは裏腹に、ロックバンドの曲だった。それも、バラード。
まるで私に言われてるみたいで、きゅんっと胸がときめく。私の手を握りしめてるのも忘れてたのか、歌う途中「愛してる」で力が強く込められたのが私に言ってるみたいで心臓が止まりそうだった。



