他の子達にはあんなに分かりやすく優しいのに、私の前では不器用すぎる姿に胸が騒めく。可愛い。はぁ、可愛い。私の彼氏が、可愛すぎます。
「私も行きたかったから行こう。電車の旅だね」
「おう」
恥ずかしさを隠すためにだろうか、窓の下を見てた秋光が慌てて立ち上がる。
「ちょっとメッセする。カラオケ屋で落ち合おう」
釣られて下を見れば、秋光の部活仲間の二人組が目に入った。私たちのお付き合いは、あくまで秘密だ。だから、逃げるように立ち去る秋光の背中を見送ってから帽子を深く被る。
どうせ秋光の部活仲間はクラスメイトでもなんでもないから。私の顔を見たところできっとピンとも来ないのだろうけど。
窓の内側から、外を歩く秋光の後ろ姿を見送る。キョロキョロしてるのは、怪しすぎるよ。なんて、カフェで一人で笑ってる私も怪しいか。
残り一口分のシナモンロールを口の中に放り込んで、アイスココアで流し込む。じゃりっとした甘さが口の中から胃まで侵食していく。



