私たちは、周りに隠れて付き合っていた。正直、秋光はモテる。身長一八〇センチ、バスケ部キャプテン。顔は、まぁそこそこ。誰にでも優しく、物怖じせず話しかける性格。モテないわけがない。

 かく言う私は、メガネに黒髪ロング。化粧なんて、肌の凹凸を隠すくらい。友達はクラスに数名。引っ込み思案で、帰宅部。

 並ぶのが烏滸がましいくらいの地味女。だから、秋光は最初に言ったのだ「付き合ってることは、二人だけの秘密にしよう」なんて。

 優しい性格の秋光だから、そういう結論に辿り着いたのだろうけど。少しだけ惨めな気持ちになった。周りにはっきり言えないほど私は、だめですか?

「光奈? みーなー?」
「あぁごめん、なんだっけ?」
「来週のお休みどっか行きたいとこある?」

 秋光が珍しく部活休みの土曜日。次のデートの予定を決めるために、私たちはお決まりのカフェに集まったんだった。

 私たちの二人きりの時間は部活終わりの夜までのほんの少しの時間のデートと、月に一度あるかないかの部活休みの一日だけだ。寂しくもあるけど、最初から分かっていたことだからわがままは言いたくない。

「秋光はどっか行きたいとこ無いの?」
「小樽水族館」
「へっ? 珍しい。そういうとこ好きじゃないじゃん」
「良いだろ別に」

 誤魔化すようにハニーカフェオレをずずずっと飲み込む。耳まで赤いのは、私が喜びそうだから言ったと解釈しても良いのだろうか。