ジャリジャリの砂糖とシナモンをたっぷり。シナモンロールにかぶりつく私を見て、心底嫌そうな声を出す秋光。

「うげ、またそんなの食ってる」

 そういう秋光の手元には、はちみつがたっぷりと沈んでいるカフェオレ。甘いものが嫌いなわけじゃないくせに、私のシナモンロールには毎回嫌そうな顔をする。

「毎回なんでそんなに嫌なわけ?」
「自由だから良いんだけどさぁ」

 拗ねたように私から視線を逸らして窓の外を眺める。窓の下の狸小路は相変わらず人で賑わっていて、人形のような人並みが揺れては返していた。

「いつも嫌そうな顔するから、秋光と一緒の時はやめようかなと思うんだけど。いつもこのカフェじゃん? 見たら食べたくなるから、無理。嫌なら待ち合わせ、次からは別の場所を指定してよ」

 でも、このカフェよりは良い場所なんて探す方が大変だと思う。大きな窓前の席は、人の往来を見やすい。誰かがお店に入ってくればすぐに見つけられるだろう。