「僕じゃなくて好きな人にあげればいいのに」
どっちでも一緒です、、
私の好きな人は君嶋くんなんだから、
「今はセーターを編んでるから、それは好きな人にあげたいかな」
なんて、それも君嶋くんだけどね。
知らないと思うけど、こそっと貴方のサイズを測らせて頂いてます。
「そう、じゃあこれは遠慮なく僕が貰うね、セーターも好きな人に受け取ってもらえると良いね」
「うん」
お願いね、君嶋くん。
表面上は少しずつ元気を取り戻して前の彼に戻りつつあるけど、心の中は分からない。時おり気分が沈んで元気がない時があった、そんな時は彼女の事を思い出しているのだろうか。それでも私は無理に明るく振る舞う事をせず自然に任せるようになっていた。
「彼女にも手編みのセーターを貰ったんだ、、」
えっ、河崎さんに、、、でも、待って、、
河崎さんと付き合い始めたのは確か一年生の三学期の終わり、もうすぐ春めく季節だ。直ぐに編み始めても寒い季節には間に合わない。彼女はいつから編み始めて彼はいつそれを貰ったのだろうか。
ひょっとしたら、彼のために編んだものでは無いのではないか、そんな疑念が頭をかすめた。
「もう僕には必要がないものだけど、どうしたらいいかな」
そんなの私に訊いたら捨てて欲しいに決まってます、だけど私が言えることじゃないよ。
「君嶋くんが、心の整理がついたら処分すればいいんじゃないかな」
「そうだね、いつまでも未練を残すのは良くないと分かってるんだけど、まだ忘れられない」
別れてから3ヶ月ばかり経っただろうか、彼は未だに彼女の面影に悩まされていた、まだまだ私の入り込む余地などないほどにその存在は大きくて濃い。



