あなたに好きと言えるまで


「あまり触ると部長に怒られるよ」

何を思ってか、彼は観測そっちのけで壁の隅に煩雑に置かれた天文部の資料を漁っていた、その中から一冊のノートを見つけると食い入るように夢中になってしまった。

しばらくダンマリのまま読み耽っていたのだろう、やがて、

「へぇー好きな子が同じ天文部にいるんだ」

突然、突拍子もない言葉が飛び出した、

何の話ですかー、ドキってするでしょ、、

私は観測の途中で目が離せず、彼の声に耳だけをそば立てて聞いていた。
気になって仕方がない、いったい何を見たらそんなセリフが飛び出すんだろう。

「片想いなんだね、告白する勇気がないんだ、その好きな人の横で手を繋いで満天の星空を見るのが夢かー、健気で可愛いね此の子」

私みたいじゃない、
そういう女の子がお望みなら此処にいるよ、、

「でも結局告白する勇気が持てなくて、夢は流れ星のように儚く消える、か、、可哀想に」

・・・・そんなオチは嫌です!

「こんな子に僕は弱いんだよねー、僕が好きなら此処においでって、僕も君が好きになるように頑張ってみるからって、そう言って優しく抱きしめてあげたい」

えっ、、、ほんとに?
私はそれを耳ではなくハートで聞いてしまった、

独り言のはずの彼の言葉に反応した私の身体は、知らぬ間に彼の傍らに歩み寄っていた、彼の横で立ち尽くす私に、彼は不思議そうな顔を向けた。

「白河さん?」

わっわっ、何やってるんだろ、彼が言ったのは私のことじゃないって、、

「あっ、いや何でもないよ、何を見ているのかなーって」
彼の斜め前にしゃがんで、手元のノートを覗き込んだ、