あなたに好きと言えるまで


「君嶋くん、黒点観測のやり方を教えるね」
「ありがと、お願いします」
冗談かと思ったのに、本当にあんぱんを買ってくれるとは思ってもいなかったからね。

望遠鏡で強い光を放つ太陽を直接見る事はできない、下手をすれば失明の危険もある。太陽の光を反射して輝く月ですらフィルターを付けて見なければ目を傷つける危険があった、ファインダーの先に投影板を取り付け、そこに写った太陽の黒点を白い紙に写し取っていく、
「どう、わかった?」

「白河さんは説明が上手だね、凄くわかりやすかった」

「ありがと、そう言ってもらえると嬉しい、私ね小学校の先生になりたいんだ」
小学校の時の担任の先生に憧れて教師を目指すようになった、自分の将来の夢を男の子に話したのは彼が初めてだ。

「しっかりと目標を持ってるんだ、偉いね」

そう言われて初めて彼の将来の夢が知りたくなった、

「君嶋くんは?」

「僕は、、、やりたい事がまだ見つからない」

「進学しないの?」

「白河さんみたいに目標があれば良いけど、将来の夢もなく進学するのは結論の単なる先送りで、大学に行っても頑張れないさ」

それは言える、まだ遊びたいとか、取り敢えず進学して考えるとか、そんな人は意外と多い、私みたいに目標を持っている人の方が少ないのかもしれない、子供の頃の夢は変わることもあるし、変わらないにしてもそこまで執着していないのに自己暗示に罹ったように固執する場合もある、彼は自分にタイムリミットを設けていて少なくとも卒業までに自分の進路を決めようとしていた。

「子供の時は、なりたい職業はなかったの?」

「大工さん。ほら自分で言うのも変だけど手先が器用でしょ、後は宇宙飛行士かな」