あなたに好きと言えるまで


その日は真っ直ぐ家に帰り、夕食前に宿題を済ませようと自分の部屋に入り机に向かっていた。

ところが、昼間の出来事が思い出されて勉強に集中することができないでいた、

「あーもう駄目だ、勉強が手につかない」

鉛筆を放り出して、のけ反るように身体を伸ばし頭の後ろで両手を組んで天井を見上げる、

これが恋なのかなー、、
なんでこんなに彼の事ばかり考えちゃうんだろう、

英単語の入る余地など無いぐらい頭の中は彼の事で一杯になってしまった。

組んだ手を離して机の上に戻し、灯りの下で自分の手をマジマジと見つめた。昨日まで単なる身体の一部だった右手が今は宝物のように思えてならない、彼が触れただけで私の中では価値が変わってしまっていたのだ。彼が手を離そうとした時、名残惜しくて無意識に指を曲げてしまったことを彼に気づかれただろうか。自分の行動が恥ずかしくて思い出すたび顔が熱くなってしまう。
彼は綺麗な手をしていた、女の子みたいに細く長い指に爪の形も綺麗な縦爪、

もう一度自分の手を見て、ため息を吐く。
私の指は標準的な長さだと思うけど、爪はどっちかと言えば短い横爪、

神様ちょっと不公平じゃないですか、、

爪は遺伝すると聞いたことがある、両親の手を思い浮かべて直ぐに項垂れた、
お父さんだ、、、お母さんに似れば良かったのに。
 
隠すように両腕を組んで顔を乗せると、正面に星の写真が目に入った、

私の机には綺麗な星の写真が飾ってある、中学生の時に科学館へ行った思い出に買ったポストカード、
いつか満天の星空を大好きな人の腕に抱かれて夜が明けるまで眺めていたい、それが私の夢だった。

その大好きな人が彼なのかはまだ分からないけど、
少なくとも今の第一候補である事は間違いない。