「……恋バナ、かな」


一瞬、時が止まった気がした。


思えばNの浮いた話なんて1度たりとも聞いたことがなかった。


知っている限り彼に恋愛経験は無い。


何度か告白をされたことはあっても、好きな人はできなかったらしい。


思いがけないNの言葉にどう反応したらいいか分からなかった。


「珍しいね」


「でもどうなんだろう。
恋バナとはちょっと違うかもしれない」


「何があったの?」


彼は、小さい子が悪戯をして怒られた時のように黙って俯いた。


どうしたのだろう。


彼がこんなに話すことを躊躇するなんて、よほど悪い話なのだろうか。


…まさか失恋?


でも、好きな人がいるなんて聞いてないし。