散々人のこと傷つけてきたくせして、自分が傷つくのは嫌なんだ。


逃げるんだ。


それなのに自分勝手に悲しむんだ。


なに悲劇のヒロインぶってるの?


悲劇のヒロインはね、傷つくと分かっていて、それでも立ち向かう強さを持っているの。


彼が私を好きになってくれる、なんて神様の気まぐれが微笑むほど、私は強い人じゃない。





"きっと、好きになった人には振り向いてて貰えないよ。それでもいいの?"


いつかのNの言葉を思い出していた。


正解だね。


私はNに電話をかけた。


「どうしたの?」


優しい声が、私の心に溶けてゆく。


彼のことを話しながら、涙が零れないように明るく振る舞ってみたりして。


「ユキって取り繕って笑うの上手いよな」