その後教室に戻ってきてすぐ机に突っ伏して、声を押し殺して泣いていた。


きっとこうなってしまうから、家に帰って聞くべきなのだろう。


ほとんどの人は何も言わず、非道な一部の人は彼をからかっていた。


そんな中、八方美人でいい子ぶっている隣の席の私だけが彼にティッシュを差し出した。


このような場面でからかわれることはもちろん「大丈夫?」と声をかけられることですら、
彼は嫌がる人のように見えた。


だから私は何も言わなかった。


何も言わずにただ傍にいるというありきたりな対応が、彼にとっては極めて心地よかったのだろう。


この出来事があってからさらに私たちの仲が深まった。


結局、Nは自転車で行ける距離の高校へ、
私は電車で20分かかる高校へと進んだ。


二年もの間ほぼ毎日のように笑い合っていた私たちは、高校入学を機に会う頻度がぐんと減ってしまった。


私は高校入学と同時にスマホを持ち始めたが、マメな連絡が苦手で中学自体の友達とはほとんど縁が切れてしまった。


それでもNだけは、私が何度既読無視しても連絡をくれた。


彼はメッセージよりも電話を好む人だった。


頻度はそんなに多くなかったが、する時は決まって長電話。