神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

…まさか。

「いやー、俺のどっぺるげんがーが現れて、ツキナに悪さしないか心配なんだよねー」

…とも言えず。

いや、正直に言っちゃって良いのかもしれないけど。

そんなこと言ったら、まーた変な噂が広がりかねないし。

学院長せんせー的には、生まれ故郷の魔法道具のことは、生徒達には知られたくないんだろうし。

ここはツキナに疑われないよう、何とか無難に切り抜ける必要がありそうだ。

「ほら、最近校舎内でお化けが出るとか、変な噂が立ってるじゃん?だから心配でさー」

まるっきり嘘ではないし、かと言ってこれだけが事実という訳でもない。

相手を騙すには、嘘と真実を半々に織り交ぜる。

嘘つきのコツだよ。

そして、案の定ツキナには疑われなかったようで。

「そうだよ。怖いよね〜あの噂…。私のところにも、あの黒い影が出てきたらどうしよう?」

そんなけしからんどっぺるげんがーは、俺が成敗してくれるよ。

「怪しいことかぁ…。特に思いつかな…あ」

あ?

何かを思い出したようだ。

まさか、本当にツキナが魔法道具を掘り当てているのだろうか。

「そういえば、ちょっと前…。登校してすぐ、畑の様子を確かめに行ったら…」

「何か見つけた?」

「うーんとね、じゃがいも畑の一部が、ちょっとだけ荒らされてたことがある」

…何だって?

俺と『八千代』は、互いに顔を見合わせた。

…じゃがいも畑…?

そこに、『オオカミと七匹の子ヤギ』が埋められてたのか?

いや、『白雪姫と七人の小人』だって、畑に埋まってたから。別に驚くことではないんだろうけど。

でも、俺達が掘り出したんじゃなくて、何者かによって荒らされていた、って…。

それはつまり、誰かが畑に入ってじゃがいも畑を漁って、魔法道具を掘り出したってこと?

何処の誰がそんなことを…。

…って言うか。

「誰かが畑を荒らしたの?そんな重要なこと、何で黙ってたの?」

言ってよ。一大事じゃん。

しかし。

「イノシシか何かが漁りに来たのかと思ったの」

あー、成程…。

畑に獣害はつきもの、って奴か…。

まぁ、悪意を持った何者かが、魔導学院のじゃがいも畑を漁る…なんて。

ふつーに考えたら、有り得ないもんね。

動物の仕業だと思うのが自然だ。

それに、まだじゃがいも畑を荒らした犯人が人間だと、はっきり分かってる訳じゃない。

もしかしたら、俺の考え過ぎなだけで。

本当に動物の仕業なのかもしれないし…。

「でも、今思えば…イノシシの仕業にしては変かなぁって。ほんの一部しか荒らされてないし、あれ以来、ぱったり荒らされることはないし」

「…」

…ああいう動物って、一度味を占めたら、しつこくやって来るって話だよね。

「あれは一体何だったんだろう…?」

…さぁ、分からないけど。

それが、どっぺるげんがー絡みじゃないことを祈ってるよ。