神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

そこで思い出すのが、少し前に現れた白雪姫の魔法道具である。

あれも、非常に面倒な事件だったけど。

あのときのことを振り返ると、最初のきっかけは、園芸部の畑から出土された棺だった。

あの棺の蓋を開けたことで、『白雪姫と七人の小人』が起動してしまった。

…ってことは、だよ。

今回の『オオカミと七匹の子ヤギ』も、誰かが起動スイッチを押したから、今こうして発動してるんでしょ?

あのときは棺だったけど…。『オオカミと七匹の子ヤギ』の場合は…。

学院長せんせー曰く、小さな絵本だって話。

起動スイッチとなったその絵本が、何処かに存在しているであろうことは、ほぼ確かだと思う。

何もないのに、いきなり発動したりしないよ。多分。

前回は、園芸部の畑で出土したから。

今回の『オオカミと七匹の子ヤギ』の絵本?とらやも、園芸部の畑の下に埋められてた、ってことはない?

それをツキナに確認しておきたかった。

何より、俺は。

自分のどっぺるげんがーが突然現れて、学院長せんせーや天音せんせーみたいに、好き勝手なことをして。

その結果ツキナに酷いことをして、ツキナを泣かせて、ツキナに嫌われるようなことになったら。

もう絶対、一生、死んでも、俺はどっぺるげんがーを許さないよ。

だから、そんな事態を未然に防ぎたいという気持ちがある。

珍しく俺が少々焦っているのも、そのせいだ。

もし、俺のどっぺるげんがーがツキナに酷いことをしたらと思うと、居ても立っても居られない。

学院長せんせーや天音せんせーのケースを見てると、有り得ない話じゃないでしょ。

そうなる前に、どっぺるげんがーを退治しなくては。

まぁ、俺や『八千代』のどっぺるげんがーが現れるのかは、まだ分からないけど…。

もしかして、既に現れてる可能性もある訳じゃん?

今こうしてる間にも、俺の顔をした俺の偽物が、校舎内の何処かで暗躍してるかもしれないじゃん?

校舎内に黒い影が彷徨いてるって噂も、未だに消えてないし…。

全く、とんだお化け屋敷になったものだ。イーニシュフェルト魔導学院は。

「あ、ちょっと前に、おっきい箱を見つけたよ?白い棺みたいな…」

と、ツキナは答えた。

それは白雪姫だね。

「それじゃなくて、その後に。何か見つけなかった?絵本とか」

「その後?絵本…?うーん…。そんな変なものは何も見てないけど…」

そっか…。

「じゃあ、何か怪しいことはなかった?」

「怪しいこと…?」

「不審なことって言うか…。あれ?って思うようなこと」

「…??どうしてそんなこと聞くの?」

…ぎく。