「隊員その2も増えたし!三人でなら、きっとも〜っと色んなお野菜を育てられるよ!」

と、ツキナは満面笑みで夢を語る。

うん、可愛い。

悔しーけど、やっぱり凄い可愛いよ。

「そーだね。今度は何の野菜を育てるの?」

「そうだな〜…。出来れば、お米とか育てたいな!」

お米か〜。良いね。

主食って感じがして。

あれ?でもそれ、畑で作るものじゃなくない?

田んぼ…なのでは?

それってもう、魔導学院の部活動でやることじゃないよね。

ツキナって、本当、何で魔導学院に入学したんだろ。

農業学校に行けば良かったのに。

そして稲作まで始めてしまったら、それは最早、園芸部の規模を超えているのでは?

ツキナがかわいーから、別にいーけど。

ツキナがどうしてもって言うなら、俺は硬いグラウンドを毎晩、夜通し耕してでも、田んぼを作ってみせるよ。

ツキナの為だからね。

「稲作か…。面白そうだね」

『八千代』も、この反応。

マジで、本格的に稲作が始まりかねない。

それはそれで悪くない。

…悪くない、けど。

今は、無邪気に稲作について考えてる場合じゃないかもしれないんだよね。

「ねー、ツキナ。つかぬことを聞くけどさ」

「何?次に育てる野菜?」

目をキラキラさせて、ツキナが振り向いた。

ごめんね、ご期待に添えなくて。

「僕は、ひょうたんを育てたら良いと思う」

『八千代』は何言ってんの。

ひょうたん…ひょうたんかぁ。いーかも。

「ひょうたん!渋いね。良いね〜育てよっかな〜」

ツキナも異論はないんだね。

畑を拡張したら、マジで、そこにひょうたんを植えるかもしれない。

それはそれでアリだな。

でも、今はそうじゃなくて…。

と、思ったが。

ツキナの頭の中は、新しく育てる野菜のことでいっぱい。

「あ、そうだ。じゃあ、今度畑を大きくしたら」

何?

「すぐり君と令月君、それぞれ自分の専用の畑にして良いよ。二人がそれぞれ好きなものを育てるの」

…ほう…?

そう来たかー。

実に興味深い提案だよ。

そんな状況じゃないと分かっていても、ついつい考えてしまうね。