――――――…こちらは、イーニシュフェルト魔導学院園芸部。

「すくすく育て〜♪お花さん、お野菜さんよ〜♪す〜くすく〜♪そだ〜て〜♪」

園芸部部長のツキナは、今日もご機嫌で、じょうろを片手に畑の作物に水をやっていた。

適当に作った歌が、こんなに可愛らしく感じるとは。

ちょっと音痴な気がしなくもないけど、かわいーからいーや。

かわいーから許されることって、あるよね。

で、そんなツキナに付き従って、俺は何をやっているのかと言うと。

「隊員その1!お水!」

「はいはい、こっちね」

俺は、空っぽになったバケツを下げ。

水がいっぱいに詰まった新しいバケツを、ツキナの前に置いた。

ツキナはしゃがみ込んで、そのバケツから水を汲んでいた。

俺の役目は荷物持ちならぬ、水持ちである。

ツキナの後ろをノコノコついていって、水の入ったバケツを渡すのが役目。

地味でしょ?

でも、合法的にツキナの傍にいられるから、俺は満足だよ。

そして、園芸部の畑にはもう一人。

「汲んできたよ」

「うむ、よくやった隊員その2!」

隊員その2として、なんか最近、園芸部の部員としてカウントされつつある『八千代』である。

君、放課後学習会はもういーの?

最近、毎日部活に『八千代』が来るようになった。

お陰で、俺のツキナと二人っきりの部活動が邪魔されてるんだけど。

まぁいーよ。『八千代』だからね。

元々、園芸部にはナジュせんせーがたまに来たりして、いつもツキナと二人っきりって訳じゃなかったし。

それに、『八千代』はとんでもない朴念仁だからね。

ツキナの可愛さも、全く理解してないみたいだし。

これでもし、『八千代』がツキナに色目を使い始めるようなことになったら…。

…そのときは、校舎内で大乱闘が始まると思う。

そうならないことを祈るばかりだよ。

ま、今のところは全然大丈夫っぽいから、安心して三人で部活動してる。

部員が増えて、ツキナは嬉しそーだしね。

しかも『八千代』は、力仕事を頼んでも、嫌な顔一つせず。

ついでに汗の一粒もかくことなく、平然とこなすし。

園芸部としては良い戦力になっている。

そこで、だろうか。

「今度季節が変わったら、畑を拡張して、新しい野菜を植えたいね!」

と、ツキナは言い出し始めた。

段々、園芸部のテリトリーが広まっていくなぁ。

これはもう、グラウンドが全部園芸部の畑になる日も近いね。