神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

…と、思っていたら。

保健室に向かう途中。

「うっ…。ひっく、ぐすっ…」

「…!?」

廊下の向こうから、泣きべそをかいた女子生徒が歩いてきた。

これまたびっくりした。

「ど、どうしたのユリナちゃん!?」

シルナが、慌ててその女子生徒…ユリナ…に駆け寄った。

名札を見ると、まだ一年生だ。

成程、俺が覚えてない訳だ。

俺も生徒の名前、もっと覚えないと駄目だな。

で、それはともかくとして。

「何?どうしたの?悲しいことがあったの?お友達と喧嘩した?」

あわあわしながら、シルナはユリナという女子生徒に尋ねた。

が。

「ぐすっ…。ひっく、ひっく…」

めそめそと泣きじゃくるばかりで、言葉にならない。

一体何があったと言うんだ。

可哀想だが、泣いているだけでは分からない…と、思っていたが。

泣いているだけでも何があったのか分かる人物が、そこを通りかかった。

「…ん?何やってるんですか?」

「あ、ナジュ…」

自称イケメンカリスマ教師のナジュが、偶然やって来た。

そして、泣きじゃくっているユリナと、そのユリナを必死に慰めようとしているシルナとを、交互に見て。

「…学院長が、いたいけな女子生徒を泣かしてる…!」

風評被害。

「可哀想に。学院長に泣かされたんですか?大丈夫ですよ。おっさんに迫られて怖かったですねー」

ナジュは、ユリナの背中を撫でながら宥めてやった。

確かにこの図だけ見たら、シルナが泣かせてるように…見えなくもないけど。

俺達が来たときには、既に泣いてたから。

別にシルナが泣かせた訳じゃないから。

「わ、私じゃないよ!私何もしてないもん!」

「今襲ってたじゃないですか。よしよし、可哀想に。僕が来たからには、おっさんの毒牙から守ってあげますからね」

完全に、シルナが悪者にされてしまっているが。

ナジュの奴は間違いなく、この時点でユリナの心を読んで、何故泣いているのか分かっているはず。

つまり、シルナが泣かせた犯人じゃないことは分かってるはずだ。

分かってて遊んでるからな。全く性格の悪い奴だよ。

遊んでないで、ユリナを慰めてやれよ。お前イケメンカリスマ教師だろ。

心の中でツッコミを入れると、勿論ナジュには伝わっていたらしく。

「成程、そうですか…。天音先生に酷いことを言われたんですね?」

ユリナに確認するように、そう言った。

天音…だと?