神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「今は、ジュリスが皆に黙っておいてくれるから、私とジュリス以外は誰も知らないけど」

「…」

「きっと、いつか皆気づくでしょ?」

「…そう、だな」

…誰もがお前のように、鈍い奴らばっかりじゃないからな。

むしろ…俺達の同僚は、勘の鋭い奴らが揃っている。

隠していても、いずれはバレるだろう。

ベリクリーデの中に、もう一人のベリクリーデがいることに。

「そしたら嫌だなーって。私を…気味悪がる、よね?」

「…そんなことはないだろ。羽久の中にも二十音がいるが、誰も気味悪がったりはしてない」

勘の鋭い奴らだが、同時に優しい奴らでもある。

ベリーシュの存在を知っても、気味悪がったり、ことさら敬遠したりはしないはずだ。

言い触らすこともないだろう。

きっと、温かく見守ってくれるはずだ。

…でも。

そりゃ怖いよな。不安にもなるだろう。

もし受け入れられなかったら、と思うと…心細くもなるだろう。

ベリクリーデの不眠の原因は、それだったのか…。

「お前も人並みに…悩み事があったりするんだな」

常に脳天気なものだと思ってたよ。

「あるよ…」

そうか。そりゃ悪かった。

「だが、心配するな。お前の中にベリーシュがいることを知っても、誰もお前を気味悪がったりしないよ。仲良くしてくれるよ、きっと」

ベリクリーデはベリクリーデ、ベリーシュはベリーシュで、それなりに対応してくれるはずだ。

羽久のようにな。

むしろ、羽久よりは付き合いやすいんじゃないか?

二十音は、シルナ・エインリー以外話が通じないが。

ベリクリーデの場合、ベリクリーデも、ベリーシュも、普通に話通じるもんな。

羽久が受け入れられて、ベリーシュが受け入れられない理由はない。

それに。

「お前の事情は…皆既に知ってる。ベリーシュが生まれたことを知っても、不思議には思わないだろうよ」

お前が神の器だってことは、皆知っている。

故に、お前の身に何が起きようとも…驚くには値しないだろう。

「…そうかな?」

「そうだよ。皆、腹は据わってる。お前が多重人格になったからって、後ろ指を差すような奴らじゃないよ」

それは、お前も知ってるだろ?

そんな器の小さい奴は、一人もいない。

怖いのは分かるが、しかし怖がる必要はないのだ。

それに…恐らく。

もし、ベリーシュの存在に気づいたとしても。

ベリクリーデが隠したがっていることを察して、何も言わずに黙っておいてくれるんじゃないかと思う。

自然に、そういう気遣いをする奴らだ。

もしかしたら、既に気づいている奴はいるかもしれない。

シュニィとか、無闇辺りは…特に鋭い奴らだからな。

気づいていながら、気づいていない振りをして…いつかベリクリーデの口から話をするまで、知らない振りで黙っているのかも知れない。

少なくとも、向こうから話を振ってくることはないだろう。

…何より。

「どんな人格が生まれようと、お前がベリクリーデであることに変わりはない」

一番大事なことだ。忘れるな。