神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

しかし。

やはりと言うべきか、ルイーシュの本効果も、長くは続かす。

「…ジュリス〜…」

「…やっぱり駄目だったか…」

俺が自分の部屋に帰って、再びベッドに戻り、一時間ほど経った後。

またしても目が覚めたらしいベリクリーデが、俺のもとにやって来た。

こんなことしてたら、もう夜明けるぞ。

いっそ、今晩はもう、このまま朝まで起きてた方が良いかもな。

今から寝ても、ろくに熟睡出来ないまま朝になるだけだ。

結局、俺もろくすっぽ眠れてないな…。

「本、傍に置いてただろ?読まなかったのか?」

「読んでみたけど、もう眠れなかった」

「そうか…。10ページくらいは読んだか?」

「一行は読んだ」

せめて1ページは読めよ。一行で諦めるな。

…まぁ、何にせよ。

ルイーシュの本作戦も、失敗してしまったということだ。

そうか、駄目だったか…。

…正直、もうネタ切れである。

ホットミルクを飲んでも駄目、音楽を聞いても駄目、アロマオイルを試しても駄目、読書も駄目…と来たら。

もうお手上げだな。

諦めて、病院を受診した方が良い気がする。

…それにしても…。

「一体、いつから眠れなくなったんだ?ここ最近だよな」

これまでは、夜中に訪ねてくることなんてなかった。

つまり、中途覚醒することなく熟睡出来ていたのだ。

それなのに、つい最近になって…不眠を訴えるようになった。

ベリクリーデは、その原因を「分からない」と言ったが。

きっと、何か理由があるはずだ。

本人が意識していなかったとしても。

一体、何が不眠の原因になっているのか…。それさえ解決出来れば…。

…すると。

ベリクリーデは、ちょこん、と俺の横に腰掛けた。

「あのね、ジュリス。さっき私…眠れない理由分からないって言ったけど」

「ん?」

「本当は、分かってるんだ。多分」

…何だと?

分かってるなら、それを早く言ってくれよ。

対処療法に徹するより、根本的解決が出来るならそれに越したことはないのだから。

「一人で寝ようとしたらね、考えちゃうの。ジュリスが傍にいたら、全然…そんなことは考えないんだけど」

「…何を考えてるんだ?」

お前の、その頭で。

「…私の中にいる、もう一人の私のこと、とか」

「…それは…」

ベリクリーデの中にいる、もう一人のベリクリーデ。

それはつまり…ベリーシュのこと、か。