神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

ホットミルクを試し。

クラシック音楽を試し。

アロマオイルを試し。

正直、そろそろ、俺もネタ切れを起こしそうである。

これまでの方法は、割と王道だったので…今度は、ちょっと変化球で。

「よし、ベリクリーデ。これを試してみろ」

「…なぁに?これ」

「見ての通りだが…本だ」

俺が持ってきたのは、一冊の本。

分厚くて、文字が小さくて、しかも読みやすい物語とかじゃなく。

最初から最後まで、小難しいことばかりを書いた、難易度高めの魔導書である。

更に、ベリクリーデとはほぼ無縁な、空間魔法について記した本だ。

著者は、俺達の同僚であり、聖魔騎士団魔導部隊大隊長の、ルイーシュである。

俺も読んだけど、非常に有意義な本だった。

が、どう考えても、ベリクリーデには難易度の高い本だ。

ベリクリーデに読ませても、ちんぷんかんぷんなのは目に見えている。

それなのに、何故このような本を持ってきたのかというと。

いるだろ?寝る前に、本を読むのが習慣の奴。

あれだよ、あれ。

残念ながら、ベリクリーデには寝る前に本を読む習慣がないので、あまり効果はないかもしれないが…。

でも、さっぱり内容の分からない授業って、退屈で、ついつい眠くなるだろ?

それと同じで、ベリクリーデも、内容の分からない本を読んでたら、眠くなるんじゃないか。

そういう目論見である。

安直かもしれないが…試す価値はあるだろう?

言っとくが、決してルイーシュの魔導書がつまらない訳じゃないからな。

ただ内容が難しくて、上級者向けなだけだ。

そもそも、空間魔法そのものが難易度の高い魔法だから、無理もないけど。

「ほら、これ読んでみろ」

「うん、分かった。…えーと…字がちっちゃくて読みづらい」

「そこを頑張って読むんだよ。そうしたら、段々眠くなってくるから」

「そっか…。えーと、空間魔法はあらゆる時空とつな…。…zzz…」

最初の句読点にすら到達せず、即寝。

全然読んでないじゃん…。

本を読むこと自体が目的じゃないから、別に良いが…。

せめて最初の1ページくらい読んでやれよ。同僚の本だぞ。

…ま、良いか。寝たんだし。

過程はどうあれ、寝られればそれで良いんだよ。

寝付きはいいんだけどな。良過ぎるほどに。

でも、問題は…また中途覚醒するんじゃないか、という点だよな。

…目が覚めたら、また読めるように…本、傍に置いておこう。

これで、朝まで眠れると良いのだが…。