神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

音楽を試した後は。

「それは何?ジュリス」

「これは、アロマディフューザーって言ってな…」

「あろま…でぃふ?」

ごめんな。舌足らずなお前には、難しい発音だったな。

まぁ、正確な発音などどうでも良い。

この道具で、ベリクリーデが眠れるかどうかが重要なのだ。

「一言で言うと…これを使うと、良い匂いがするんだよ」

「匂い…?」

音楽で、聴覚による入眠法は試した。

じゃあ、次は嗅覚から入眠する方法を試そう。

「リラックス効果のある匂いを嗅ぐと、落ち着いて眠れるらしいぞ」

音楽と違って、匂いだけなら、両隣の部屋に迷惑かけないしな。

「そうなんだ…。何の匂いなの?ジュリスのベッド?」

そんな匂いでリラックス出来るかよ。

「まぁ、好みにもよるけど…。今日用意したのは、ラベンダーと…ベルガモットの香りだな。どっちが良い?」

どちらも、リラックス効果があることで有名なアロマオイルだな。

どちらを選ぶかは、それこそ好みの問題。

「ベランダの匂いは、あんまり好きじゃないなぁ…」

と、顔をしかめるベリクリーデ。

ラベンダーな、ラベンダー。

ベランダの匂いって何だよ。どんな匂いだ。

「分かったよ。じゃ、ベルガモットの匂いにしよう」

「うん」

ベルガモットのアロマオイルをセットして、スイッチオン。

室内にふんわりと広がる、爽やかなベルガモットの香り。

おぉ、なかなか良い香りじゃないか。

「どうだ?」

「玄関みたいな匂いする」

例え、例え。

芳香剤の香りとは違うんだぞ。

「でも、良い匂いだねー」

「だろ?これならよく眠れそうか?」

「うん。これなら眠れ…。…zzz…」

おい。話の途中。

まだ喋ってただろ。喋りながら寝るのかお前は。

本当に、これが不眠症を訴える者の睡眠か。

一瞬で寝やがった。

…まぁ、眠れるなら良いことだ。

「アロマディフューザーは…このままセットしておくか」

音楽と違って、周囲に迷惑をかけることはないし。

このまま、朝になるまで放置しておこう。

これなら、万一途中で目が覚めたとしても、リラックス効果は持続することだろう。

じゃ、俺はここいらで退散する。

何だかんだ、もう今夜だけで何度もベリクリーデに付き合って…俺もそろそろ眠いんだよ。

「ふぁ…」

俺にも、リラックス効果、効いたか?

まぁ良い。帰って寝よう。

今夜はこれ以上、ベリクリーデに煩わされることなく、朝まで安眠出来ることを祈って。

アロマディフューザーをそのままにして、自分の部屋に戻ることにした。

俺も寝るよ。おやすみ。