神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

しかし。

自分の部屋に帰った俺は、寝る前に、一度シャワーを浴びに行った。

さっぱりしてから寝ようと思って。

タオルを首にかけて、自分の部屋に戻り。

さて、今度こそ本当に寝よう…と。

そう思った、そのとき。

「ジュリス〜…助けてー」

「…また来た…」

ベリクリーデの不眠に付き合うあまり、俺の方も不眠になりそう。

「…どうしたんだよ?」

分かっていながら、一応尋ねてみたところによると。

「目が覚めちゃった」

…やはりそうか。

「それに、起きたら音楽が止まってたの」

「あ、うん。それはごめん…」

一度寝てしまったら、あとはやかましいだけかと思って、持って帰ってしまった。

あのまま、置いておいた方が良かったか?

…まぁ良い。

「また眠れなくなっちゃったよ」

「そうか…。他にも方法はあるから、そっちを試してみよう」

「本当?それで眠れるかな?」

「…」

…それで眠れるかな、って言うけどさ。

お前今のところ、入眠するだけなら、不眠症とは思えないほど早いぞ。

ただ、その眠りが持続しないらしい。

…でもお前、俺の部屋で寝てたときは、中途覚醒することなく、朝までぐっすりだったよな…? 

一体どうなってるんだ。ベリクリーデの睡眠サイクル。

まぁ、あれだ。

こいつは色々と、色んな意味で、普通の人間とは程遠いからな。

何かあるのかもしれない。ベリクリーデなりの睡眠サイクルが。

…それはともかく。 

起きてしまったのなら、仕方ない。

クラシック音楽作戦も、失敗だったと言わざるを得ない。

入眠には成功してるんだがな。

それが持続しなきゃ意味がない。

何度も中途覚醒を繰り返すのって、結構辛いものがあるもんな。

「次は何をするの?」

「次か?次はな…。…とりあえず、ベリクリーデの部屋に移動しよう」

「うん、分かった」

…しかし。

こう何度も、真夜中に女性隊舎を行き来するのって。

これまた、余計な誤解が生まれそうだよな…。

仕方ないだろ。ついていってやらないと、ベリクリーデの方から来るんだから。

これは不可抗力って奴だ。

言っとくが、疚しいことは何もないからな。

それだけは、はっきりさせておいてもらうぞ。