神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

…かくなる上は。

責任は、お前に取ってもらうぞ、ベリクリーデ。

「…お前アホか?馬鹿なのか!?何でここにいるんだ!?」

「…ほぇ?」

ほぇじゃねぇんだよ。 

とぼけた顔して誤魔化そうとするな。

「いつの間に入ってきた!?」

「えぇっと…ちょっと前に来たよ」

あ、そう。

俺そのとき何してた?多分寝てたんだろうな。

起きろよ、俺。

「何で、わざわざ俺の部屋に来て寝るんだよ…!?」

「自分の部屋で寝ようと思ったけど、眠れなかったから」

またかよ。

それ嘘だろ。お前、さっきまでめちゃくちゃよく寝てたぞ。

「それに、ジュリスを喜ばせてあげたかったから」

「…はぁ…?」

喜ばせるって…何のことだよ?

現状、喜びとは程遠いところにいるんだが?

「シュニィが言ってたの」

シュニィ?

何故、今シュニィの名前が出てくる?

「…シュニィが何言ってたんだ?」

「ジュリスさんの傍にいてあげてください、って。だから傍にいることにした」

話が全く見えない。

「どういうことだよ…?何でシュニィが出てくるんだ…?」

「だって、ジュリス…。ツボもブレスレットも要らないって。効果がないって言うから」

「…それは…言ったけど」

だって、本当に効果ないんだから。

で、それとこれと、何の関係が…。

「他にどうしたら、ジュリスは喜ぶのかなって思って、シュニィに相談したんだ」

…そうだったのか。

シュニィも、突然変なこと聞かれて…首を傾げただろうな。

いや、ベリクリーデが突然変なことを言うのは、もう、ベリクリーデのお家芸みたいなものだから。

案外、驚かずに淡々と答えたのかもしれない。

「そうしたらシュニィが、『ジュリスさんは、ベリクリーデさんが傍にいるだけで嬉しいと思いますよ』って」

「…」

「だから、一緒にいることにしたの」

…シュニィ…お前って奴は…。

なんという…余計なことをいっ…、

…いや、これもシュニィなりの優しさなのかもしれない。

目を離せば、ベリクリーデはすぐに、突拍子もないことを始めるからな。

せめて俺の傍に置いておけば、大人しくしているだろうと。

そう思って、わざとそんな助言をしたのかも。

まぁ、どんな助言をしようと…ベリクリーデが珍妙なことをする事実に、変わりはないけどな。

傍にいろって…そりゃ分かるけども…。

…だからって、傍にいる(物理)かよ。

寝てるときまで傍にいろなんて、一言も言ってねぇ。

「あのな、ベリクリーデ…」

「これで、ジュリスは喜んでくれたよね。良かった」

…。

「元気、出た?」

…それは…。

…元気…は、別に変わらないけど…。

ベリクリーデなりに、俺を喜ばせようと…元気を出してもらおうと…色々考えた結果なのだと思うと。

怒るに怒れない。

自分の為にしてくれたことを怒るのは、結構難しいもんだ。

「…分かったよ。ありがとうな」

結果、怒るどころか俺は、むしろ感謝の言葉を口にしていた。

「うん。どういたしまして」

「…」

…部屋に勝手に侵入され、酷い誤解が生まれ。

それなのに、何で俺が感謝しなきゃならないんだか。

ベリクリーデのこういうところ、本当ズルいよなぁ…。