神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「いや、その、な、なんでもな、」

「開けても良いですか?」

「ちょっ…ちょっとまっ…」

「失礼します」

…止める暇もなかった。 

ガチャッ、と扉が開き。

部下が部屋の中に入ってきた。

そして。

「…」

狭いベッドの上に、ジャージ姿の俺と…。

その隣で、寝乱れて、あらぬところが顕になっているベリクリーデを見つけた。

このときの、部下の顔。

ポカーンとして、時が止まったように立ち尽くしていた。

…あぁ…。

「…こ…これは、し、失礼しました!!」

間違いなく、あらぬ誤解が生まれた瞬間だった。

そりゃそうだよなぁ。

弁明したくても、これを見たら、何を言っても言い訳にしか聞こえまい。

それでも、俺は諦める訳にはいかない。

「ちょっと待て。誤解だ。良いか、俺は何もしてない。ベリクリーデがかっ…」

「んん…?…じゅりす、おはよー…」

この、嫌なタイミングで。

ベリクリーデ、起床。

片乳はみ出したまま、のろのろ起き上がった。

お前、パジャマはちゃんと着ろ。

「むにゃむにゃ…。もう朝かぁ。ジュリスと一緒に寝ると、朝が来るのが早いね」

おい、何言ってるんだお前は。

「ここにお泊りすると、いつも朝になったら腰が痛くなるね。でも…ジュリスと一緒にいられて嬉しいから、私、我慢する」

と、無駄に健気に微笑むベリクリーデを見て。

俺の部下は、わなわなと肩を震わせていた。

…あのな、違うんだよ。なんかもう、言い訳出来ない雰囲気になってきてるけど。

本当に違うんだよ。
 
「た、大変…大変失礼しました。そ、その…ご、ごゆっくり…!」

「おい待て。そういう気遣いは要らない」

「お邪魔しましたっ…!」

二人で過ごす朝を邪魔してしまった、とばかりに。

俺の部下は、慌てて退室していった。

…言い訳…させてもらえなかった。

いくら無駄だとしても、言い訳はしたかった。

まるで認めてしまったようじゃないか。

…言っとくが、本当に誤解だからな。

「?どうしたの、ジュリス?」

「…いや…」

またしても、超絶不本意な噂が流れることになるんだな、と思うと。

涙ちょちょぎれるな、マジで。