…しかし。

「…」

ベリクリーデは、無言でじっと俺を見つめていた。

「…何で黙ってるんだよ?」

「…ジュリス」

あ?

「…三つって言ったのに、いっぱい言ってる…!」

「…言うべきことなら、もっと山ほどあるわ。この馬鹿タレ」

俺はお前に、溜め込んでいる全ての小言を言おうと思ったら、一晩どころじゃ足りないぞ。

ベリクリーデへの文句は、店を開けるほどあるからな。

…そうだというのに。

「…まぁ良いや。ジュリス遊ぼ」

「何が『まぁ良いや』なんだよ?」

何も良くないわ。
 
お前の仕事してんだぞ、俺。今。

ちょっとは労おうとか、感謝の気持ちとか、ないもんかね。

…別に良いけどさ。俺が自分から引き受けてることだし。

「良いか、俺は忙しいんだ。お前と遊んでる暇はない」

「え?仕事と私と、どっちが大切なの?」

何言ってるんだ。

何処で学んだんだ?そんな台詞。

仕事に決まっ…。

…いや、お前の為に仕事やってんだろ。

「とにかく、遊びたいんなら一人で遊んでろ」

「えー」

えーじゃねぇ。

ったく、相変わらずだが…困った奴だ。

「じゃ、一人で遊ぶね」

と言って、ベリクリーデは俺のベッドに腰を下ろした。

おい。何でここで遊ぶんだよ。

自分の部屋に帰ってから遊べ。

…しかも、あろうことか。

「わー。ジュリスのベッドふかふか〜」

「こら、勝手に寝るな。つーか、お前の部屋にあるベッドと一緒だよ」

「…zzz…」

「寝るの早っ!?」

振り向くと、ベリクリーデは俺のベッドに横たわって、すやすやと眠っていた。

…眠れなかったんじゃないのか?お前…。

一瞬で寝たぞ…。

…ってか、何で俺の部屋で寝るんだ?

よ、け、い、な…誤解を生むから、今すぐ帰って欲しいのだが?

…しかし。

「…」

眠っているベリクリーデの、間抜けな寝顔を見たら。

起きろ馬鹿、と叩き起こすのも忍びなく。

「…仕方ない。今日はオールだな…」

まさか一緒に寝る訳にはいかないので、俺は朝まで起きていることにした。

何で俺の部屋なのに、俺が遠慮しなきゃならないんだ…?