だが、当時の俺は…このとき、素直に頷くことはなかった。
むしろ、ぎょっとしてユリヴェーナを見つめた。
冗談であって欲しかった。でも、冗談ではなかった。
ユリヴェーナは、自分が死んだときのことを考えていた。
「…縁起でもないことを言うなよ」
死ぬ覚悟を決めていることは知っている。
だが、まだ生きているのに、もう死んだ気になるんじゃない。
「君しかいないんだ。君なら、魔剣を扱えるだろう?」
「扱えるかどうかは関係ないだろ。それは俺のものじゃない。お前と…お前の村のものだ」
俺は、そこにたまたま立ち寄っただけの部外者でしかない。
そんな俺が、秘境の村の秘宝とも言える『魔剣ティルフィング』を、譲り受けるにはいかない。
「俺は英雄にはならない」
「分かってる。君に英雄の役目を担って欲しいとは言わない」
「だったら…」
「秘境の村はこれから、山と谷を越えた先にある新天地で…新しい歴史を築いていく。そこに…古い文化や風習を持ち込むべきではないんだ」
ユリヴェーナはそう言って、自身の考えを語った。
「この剣が村にある限り、村人はまたしても…英雄を求めてしまう。頼ってしまう。いつ現れるか分からない英雄に縋るのではなく、自分の足で立ち、自分の頭で考えなければならないんだ」
「…」
「何処かに封印してしまうより…信頼の置ける人物に、持っていて欲しい。君ならこの魔剣を…正しく扱えるはずだ」
「…それは買い被りだ」
何で、流浪の旅人ごときをそんなに信用出来るのか。
「魔剣の力を使って、悪事を働くかもしれないぞ」
「いいや、君はそんなことしないよ」
…やけにきっぱり言い切るじゃないか。
信用してくれているのは結構だが、その信頼の根拠は何処に…。
「僕には分かるんだよ。君が悪人じゃないってことが」
「…」
「だから、君に持っていて欲しい。僕の正義を…君が、受け継いでくれ」
…それはまた。
…随分な大役を仰せつかったな。
「…分かった。そのときは、俺が…『魔剣ティルフィング』を預かる」
「…あぁ、そうして欲しい」
「でも、それはお前にもしものことがあったら、の話だ。それまでは…」
「勿論だ。僕も死に急いだりはしないよ」
…それなら良い。
…だが。
いくらユリヴェーナが、死に急がなかったとしても。
彼女に忍び寄る死の影は、段々と濃くなっていくばかりだった。
ユリヴェーナに残された時間は、ごく僅かしかなった。
そして、ユリヴェーナが何より大事に守ろうとした…秘境の村の命運も…。
むしろ、ぎょっとしてユリヴェーナを見つめた。
冗談であって欲しかった。でも、冗談ではなかった。
ユリヴェーナは、自分が死んだときのことを考えていた。
「…縁起でもないことを言うなよ」
死ぬ覚悟を決めていることは知っている。
だが、まだ生きているのに、もう死んだ気になるんじゃない。
「君しかいないんだ。君なら、魔剣を扱えるだろう?」
「扱えるかどうかは関係ないだろ。それは俺のものじゃない。お前と…お前の村のものだ」
俺は、そこにたまたま立ち寄っただけの部外者でしかない。
そんな俺が、秘境の村の秘宝とも言える『魔剣ティルフィング』を、譲り受けるにはいかない。
「俺は英雄にはならない」
「分かってる。君に英雄の役目を担って欲しいとは言わない」
「だったら…」
「秘境の村はこれから、山と谷を越えた先にある新天地で…新しい歴史を築いていく。そこに…古い文化や風習を持ち込むべきではないんだ」
ユリヴェーナはそう言って、自身の考えを語った。
「この剣が村にある限り、村人はまたしても…英雄を求めてしまう。頼ってしまう。いつ現れるか分からない英雄に縋るのではなく、自分の足で立ち、自分の頭で考えなければならないんだ」
「…」
「何処かに封印してしまうより…信頼の置ける人物に、持っていて欲しい。君ならこの魔剣を…正しく扱えるはずだ」
「…それは買い被りだ」
何で、流浪の旅人ごときをそんなに信用出来るのか。
「魔剣の力を使って、悪事を働くかもしれないぞ」
「いいや、君はそんなことしないよ」
…やけにきっぱり言い切るじゃないか。
信用してくれているのは結構だが、その信頼の根拠は何処に…。
「僕には分かるんだよ。君が悪人じゃないってことが」
「…」
「だから、君に持っていて欲しい。僕の正義を…君が、受け継いでくれ」
…それはまた。
…随分な大役を仰せつかったな。
「…分かった。そのときは、俺が…『魔剣ティルフィング』を預かる」
「…あぁ、そうして欲しい」
「でも、それはお前にもしものことがあったら、の話だ。それまでは…」
「勿論だ。僕も死に急いだりはしないよ」
…それなら良い。
…だが。
いくらユリヴェーナが、死に急がなかったとしても。
彼女に忍び寄る死の影は、段々と濃くなっていくばかりだった。
ユリヴェーナに残された時間は、ごく僅かしかなった。
そして、ユリヴェーナが何より大事に守ろうとした…秘境の村の命運も…。


