神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「!?」

俺もユリヴェーナも、驚いて立ち上がった。

そこに、村人の一人が家の中に飛び込んできた。

「政府軍だ!ユリヴェーナ様、政府軍が攻めてきました!」

「…!またか…!」

ユリヴェーナは顔をしかめ、拳を握り締めた。

政府軍って…。

「言っただろう?この国の人間は、僕達を追い出して、この村を潰そうとしているんだ」

ユリヴェーナは、そう説明してくれた。

成程、それで政府軍が…。

「ともかく、迎撃だ。秘境の村を守らなくては…!」

『魔剣ティルフィング』を手に取り、ユリヴェーナは家の外に駆け出した。

俺もユリヴェーナに続いて、外に出た。

そこは既に、阿鼻叫喚の地獄に変わりつつあった。

耳を塞ぎたくなるような破裂音、破壊音が、村中あちこちから響いていた。

その轟音に混じって、人々の悲鳴や泣き声、怒号が聞こえてきた。

焦げ臭い匂いと、目がツンとする黒い煙が、あちこちに立ち昇っている。

家が、畑が、燃やされているようだ。

…どうやら政府軍とやら、重火器の類を持ち出してきたらしい。

これじゃあ、熊手だのノコギリだので武装した村人達は、手も足も出ないだろう。

人々は逃げ惑い、火に追い立てられ、取り囲まれた小さな村の中で、逃げ場所を探していた。

俺はどうするべきか、一瞬悩んだ。

村人達を守るべく、ユリヴェーナと共に政府軍と戦うべきか?

部外者の俺に、そんなことをする権利があるのか?

俺に助けられることを、村人達は望むのか…?

躊躇った俺の前に、片足を失って悲鳴をあげている子供が転がった。

噴水のように血が噴き出していて、素人目から見ても致命傷だと分かるほどだった。

しかし、村人達は誰も自分が逃げるのに必死で、怪我をした子供を助ける余裕などない。

このまま放っておけば、この子は死ぬ。

…助けられる命を見捨てるのは、忍びなかった。

戦う権利はなくても…守るくらいなら、許されるのではないか?

俺は地面に膝をつき、杖を手に取った。

回復魔法なら、得意ではないものの、一通りは齧っている。

…気がつけば、俺は。

片足を失った子供の傍に跪き、回復魔法をかけていた。

余計なお世話かもしれないが、目の前で助けられる命が失われる様を見るのは、後味が悪かった。

…こうしている間にも、ここまで戦闘音が響いている。

ユリヴェーナは、どうしている?

彼女は無事なのだろうか?

「…よし、これで大丈夫だからな」

回復魔法のお陰で傷口が塞がり、出血が止まったのを確認してから。

俺は立ち上がって、戦闘音の方に向かって走った。