神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「…あの、グラスフィア先生」

「ん?」

「今日、私がグラスフィア先生に、この科目の質問をしたこと…。学院長先生には、黙っていてもらえませんか…?」

「…は?」

突然、女子生徒は奇妙なことを言い始めた。

どういう意味だ?シルナに黙ってろって?

彼女が今日、俺に質問しに来たことを?

いや、別に言い触らすつもりはないが…。

でも、後でシルナに「この科目でこういう質問を受けたから、こんな風に教えた」という報告はするつもりだった。

万が一、俺が間違ったことを教えてしまったら、大変だからだ。

それなのに彼女は、質問しに来たことは黙っていて欲しいと言う。

何で?

わざわざ質問しに来たことを、知られるのが恥ずかしいのだろうか?

しかし。

「いえ、その…。実は…グラスフィア先生に質問する前に、昨日…放課後に、学院長先生に声をかけたんです」

と、女子生徒は打ち明けた。

そうだったのか。

じゃあ、やっぱり俺より先に、シルナに教えてもらおうとしたんだな。

そりゃそうだよな。分からない科目があったら、担当教師に聞くのが一番…。

「でも、そうしたら…怒られてしまって…」

…は?

俺は、思わず開いた口が塞がらなかった。

我ながら、間抜けな顔でポカンとしていたと思う。

「すぐに先生に聞くんじゃなくて、自分で勉強して、自分で考えろって…。だから昨日の放課後は、ずっと学生寮で何度も教科書を読み直してたんですけど…。…やっぱり分からなくて…」

「…」

「学院長先生に聞いたら、また怒られるかなって…。だから、グラスフィア先生に…」

…それで、俺に聞きに来たのか?

シルナに怒られるのが怖いから?

「その…私が懲りずに、自分で勉強せずに先生を頼ったって知ったら…また、学院長先生に怒られてしまうかもしれないので…。出来たら…黙っていてもらえると、嬉しいです」

もじもじと、困ったような顔で彼女は言った。

怒る?シルナが?

生徒が分からないところを聞きに来たと、そんなことを知ったら、シルナに怒られるかもしれない?

…そんな馬鹿な話、有り得ない。

俺は、目の前の女子生徒が何を言っているのか、信じられない気分だった。