神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

30分ほどかけて、生徒の分からないところを説明すると。

「あ、成程、そういうことか…」

「そう。分かったか?」

「はい…!ありがとうございます」

それは良かった。

自信なかったけど、何とか教えられたよ。

「他に分からないところは?遠慮しないで、何でも聞いて良いんだぞ」

乗りかかった船だからな。

分からないところがあるなら、今日、ここで全部はっきりさせよう。

教師としても、生徒目線で分からない箇所を教えてもらえるのは、結構助かる。

教師の思う難しいところと、実際に生徒が思う難しいところは、意外と違っていたりするのだ。

すると。

「いえ、もう大丈夫です…。ありがとうございました」

「そうか」

この女子生徒の疑問は、全て解けたらしい。

それは何より。

…何より、なんだけど。

俺は、ふと気になった疑問を口にした。

「…それにしても、シルナ…学院長先生には聞かなかったんだな」

いや、別に俺でも良いんだけどさ。

「え…?」

「これ、学院長先生の科目だろう?」

「それは…そう、なんですけど…」

正直、俺は自分のことを、生徒から親しみやすい教師だとは思ってない。

他の教師と比較したら、俺は割と…近寄り難い部類に入るんじゃないかと思う。

イレースほどじゃないけどな。

うちの学院の教師と言えば、シルナを始め、生徒との距離はかなり近い。

シルナは言うまでもなく、生徒と友達のように接するし。

ナジュはイケメンカリスマ教師を自称しており、主に女子生徒から、絶大な人気を得ている。

最近では天音も、持ち前の物腰柔らかな性格が功を奏してか、生徒から話しかけられることが増えているようだ。

イレースは…あの性格だけど、しかし生徒から質問されることは多いらしい。

イレースは、教育に非常に厳格な人間である。

まさに、教師の鑑。

そんな彼女は、生徒が分からないところを尋ねたからといって、「そんなことも分からないのか」と叱責するようなことはない。

生徒が理解するまで、じっくり教えている。

とても辛口な彼女ではあるが、アドバイスは非常に的確だし、分かりやすいと評判だ。

分からないところを、素直に分からないと認め、積極的に学習しようとする生徒に対しては、イレースも誠意を以て応える。

一度は、「この科目とこの科目とこの科目のここまで全部、どうしても分からない」と涙目で訴えてきた生徒の為に、放課後に個別授業のプログラムを組んで、マンツーマンでじっくり指導したこともあるそうだ。

なかなか、そこまで出来る教師はいないぞ。

さすがはイレース。同じ教師として、頭が上がらない。

…で、それはともかくとして。

イーニシュフェルト魔導学院には、そういう教師が多いから…俺に質問してくる生徒って、結構珍しい。

まぁ、俺の主な担当科目は、上級生相手の時魔法だから…。そのせいでもあるんだろうけど。

他の教師達を差し置いて、俺に尋ねてくるとは…。

有り難いことではあるが、「何故俺?」という疑問が残る。

…すると。