神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

――――――…令月達四人が、密かに話し合っていたことが何なのか。

俺がそれを知ったのは、シルナが幽霊にチョコレートを供えると喚いていた、翌日。

本日最後の授業が終わって、教室から出ようとしたところを、女子生徒に呼び止められた。

「あの、グラスフィア先生…」

「ん?」

振り向くと、ノートと筆記具を手にした女子生徒がいた

「どうした?」

「あの…ここ、分からなくて…。教えてもらっても良いですか?」

もじもじと、困ったような顔でそう聞いてきた。

どうやら、授業で分からなかったことを、個別で教えて欲しいらしい。

それは良いことだ。

分からなかった箇所を、分からないまま放置しているより、ずっと良い。

「良いよ。…職員室で教えようか?」

「…!はい、ありがとうございます…」

幸い、この後は放課後だ。

マンツーマンで、ゆっくり教える時間はある。

納得が行くまでじっくり教えるとしよう。

俺はその女子生徒を連れて、職員室に移動した。

生徒を座らせ、机の上にノートを広げる。

そのときに、気がついた。

あれ、この科目、俺の担当科目じゃない。

この科目って確か、シルナが教えてるんじゃなかったか。

それも、いつもの分身シルナではなく、本物のシルナが教えている科目だ。

別に、他科目の質問は受け付けません、と言うつもりはないが…。

やはり教師としては、自分の担当科目以外の質問をされると、ちょっと自信をなくす。

教えられない訳じゃないんだけど。

「これ、シルナ…。えぇと、学院長が教えてる科目だよな」

「はい…。…やっぱり、駄目ですか?」

「いや、駄目じゃないよ」

自分の科目ほどの自信はないが。

それでも、教えられないことはない。

「それで、分からないのは何処だ?」

「えっと…まず、この間の授業で習った所で…」

…このようにして。

俺は、女子生徒にマンツーマンで、彼女が分からないと言うところを説明した。

生徒はよく、分からないところを教師に聞くことを恥ずかしがったり、遠慮したりするんだが。

ぶっちゃけ教師としては、生徒の分からないところを教えるのは、いかにも教師の仕事って感じがして、悪い気分ではない。

何度も言うが、分からないところを分からないままにしておくよりは、ずっと良いからな。