神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

俺達はご覧の通り、やる気満々だったのだが。

…しかし。

「…三日間、猶予をやる。それまでに決めておくことだ」

族長の爺さんは、偉そうにそう決めつけた。

猶予だと…?馬鹿にしやがって。

何処まで上から目線なんだ。

「お前、生きてここから逃げられるとおもっ…」

「三日が過ぎたらまた来る。精々、己の犯した罪を今一度よく考えるんだな」

やっぱりこいつ、ムカつくわ。

上から目線にも程がある。

一発、魔力の塊でもぶつけてやろうと思った。

…が。

突如として、爺さんの身体がドロドロと溶け。

床に吸収されるように、その場から消えてしまった。

その後は、もう跡形もなくなっていた。

「えっ…!」

…何だ?今の…。

ワープ…にしては、いささか気色悪いのだが…。

部屋の中に残っているのは、鼻を突く腐敗臭だけだった。

「何処行ったんだ、あいつ…」

「…逃げたようですね。ちっ…逃げ足の速い奴です」

雷を撃ち損ねたイレースが、舌打ちを漏らした。

…まぁ、奴はイーニシュフェルトの里の族長だと言ってたからな。

シルナ並みの…いや。

シルナ以上に、陰湿極まりない魔法を扱えることだろう。

言いたいことだけ全部言って、危なくなったら緊急離脱出来るよう、下準備してきたのだろう。

…こればかりは仕方がない。

俺達にとっては、何の前触れもなく、完全に奇襲攻撃を仕掛けられたのだし。

誰も怪我をせずに、爺さんを撤退させたのだと考えれば…。

…まぁ、悪くないだろう。

不愉快なのは変わらないけどな。

「…シルナ、大丈夫か?」

俺は、未だに顔面蒼白で俯いているシルナに声をかけた。

魔力を消耗し切って、ただでさえ弱ってるところに。

過去からの亡霊が現れて、不意打ちで痛いところを突かれるなんて。

シルナにとっては、泣きっ面に蜂だろう。

「羽久…私は…」

「何も言うな、何も…。お前は悪くない」

シルナの気持ちも考えず、一方的に「イーニシュフェルトの里の価値観」を押し付ける、あの爺さんが悪い。

シルナにだって、自由に生きる権利があるのだ。

その権利を無視するような奴に同情の余地は…。

…そのとき。

「…あいつ…は、不味いですよ…」

「ナジュ…?」

満身創痍状態のナジュが、苦しげに呻いた。