神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

ヴァルシーナのお祖父さんが、何でこんなところに…。

…いや、何でこんなところにいるのかは愚問だな。

ご覧の通り。

シルナに文句つけに来たのだ。 

なんとまぁ勝手なことを…。

「我が一族の汚点は、貴様を救世主に任命した我が、責任を持って消し去らねばならない…」

何言ってんだ、こいつ。

先に責任押し付けたのはお前だろ。

で、都合が悪くなったら消す、と?

見勝手にも程がある。

「…調子に乗るなよ」

口を挟むなと言われたが、しかし口を挟まずにはいられなかった。

当たり前だろ。

俺は、シルナの相棒なんだから。

「さっきから聞いてりゃ…言うこと為すこと、孫娘と同じだな」

この爺さんあって、あのヴァルシーナあり、ということだ。

見た目が違うだけで、言動はヴァルシーナのコピーのようだ。

ただし、さすが長老というだけあって…重圧感は、爺さんの方が遥かに上だった。

しかし、俺は怯まない。

ここまでコケにされたのだ。俺も黙ってはいられない。

万全のコンディションではないけども…退くに退けないときはある。

今がそうだ。

絶対に…シルナに手は出させない。

「…」

俺とイレースと、それからすぐりが、一歩前に出た。

その後ろで、令月が小刀を構えていた。

盤石の布陣…とは言い難いが。

こちらも精鋭揃いだからな。

老いぼれ爺さんの一人くらい、どうとでも…。

…しかし。

「シルナ・エインリー。神に見離された貴様に、選択肢を与えよう」

爺さんは俺達には目もくれず、シルナにそう言った。

「選択肢…?」

「貴様の首と、そこにいる…邪神の器の首を差し出せ。それで全て水に流してやろう」

…はぁ?

何を、ふざけたことを…。

「愛する者と心中するなら、本望だろう。これ以上無益な血を流さずに済む」

「…」

「貴様が消え、邪神が消え…正常なる世界に戻った後のことは、我が孫娘に一切を託す」

ヴァルシーナに…?

あいつがそんな器だとは、とても…。

「貴様が背負う責任を、我や孫娘が肩代わりしてやろうと言うのだ。裏切り者には勿体無いほどの処遇だろう」

「…」

「選べ。責任を捨てて、ご執心の邪神の器と共に死ぬか。それとも…この期に及んで、まだ恥を晒し続けるか」

…こいつ。

なんて嫌なジジィだ。シルナの痛いところを、何度も的確に攻撃して…。

「…学院長が選択をする前に、あなたが黒焦げになるという選択肢は如何ですか?」

イーニシュフェルトの里の族長だろうが、関係なく恐れ知らずのイレースが。

自身の杖に、バリバリと雷を纏わせていた。

容赦がない。容赦が。

しかし、俺もイレース案に賛成だ。

ここでこいつを丸焦げにしてしまえば、全て丸く収まる。

丸焦げだけに。

「…そういう訳だ。お前はこの場で死ね」

俺もまた、杖を握り締めた。