お前…普通に喋ろうと思ったら、喋れるのか。

だったら、最初からそうしてくれ。

いや、でも。

シルナの裏切り…って、それはつまり…やっぱり…。

「我らイーニシュフェルトの里の悲願を…贄として捧げられた我らの無念を…踏みにじった貴様を、我らは断じて許さぬ…」

…そうかよ。そのことかよ。

そうだろうな。

それ以外に…シルナをこれほど顔面蒼白にする理由はない。

また、イーニシュフェルトの里絡み…。

いい加減シルナをそっとしておこうとか、放っておいてやろうとか、そういう気遣いはないのか。

人の心がないのか、お前達は。

それともあれか。

人の心がないのは、裏切ったシルナの方だとでも言うつもりか?

「自らの役目を忘れ、あろうことか邪神に身を売るとは…」

「…」

「ましてや、厚かましくもイーニシュフェルトの名を冠する学院を建て、二重の意味で死者を愚弄したその罪…何を持って贖わせようか…」

「そ…れ、は…」

痛いところを突かれたシルナが怯むのを見て、俺はカッと頭に血が上った。

このジジィ…言いたいことを言わせておけば。

「ふざけんなよ、老いぼれジジィ。黙って聞いてりゃ…勝手なことばっかり言いやがって」

一方的にシルナを追い詰めて、それで勝ったつもりか。

「シルナが何を選択しようと、それはシルナの自由だろ。里のもんだか誰だか知らないが、お前に口出しする権利は…」

「貴様こそ口を挟むな。…この忌々しい邪神の写し身が」

…あぁ、そうかい。

好きに呼べば良い。

「我は、今は亡きイーニシュフェルトの里の、族長の座を任せられた者」

唐突に身分を明かしやがった。

何だと?

やけに偉そうだと思ったら…こいつ、イーニシュフェルトの里の族長…。

つまり、ヴァルシーナの祖父さんだったのか。