神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「ふむ…。ここで議論していても、前には進みませんね」

と、不死身先生が言った。

「じゃあ、どうするの?」

「学院長の様子が本当におかしいのか、戻って観察してみましょう」

成程。

まぁ、そうするしかないよね。

本人に、「最近真面目になったって本当?」と聞く訳にもいかないし…。

「ちなみに、ナジュせんせーは学院長せんせーの心を読んだの?何か様子が変わったことはなかった?」

『八千歳』が、不死身先生に尋ねた。

「なーんにもありません。さっきも読みましたけど、相変わらず『幽霊怖い幽霊怖い。チョコレートで和解したい』とか、そんなつまんないことを考えてるだけでした」

本当につまんないね。

でも、いつもの学院長って感じだ。

心変わりしたようには思えない。

「まぁ、自分の変化を自覚してる人って、案外少ないですから。変わってしまったことに気づいてないだけかもしれません」

「そっかー…」

結局、その人が本当に変わってしまったのかどうかは。

本人ではなく、他人の目から見た客観的な意見でしか判断出来ない、と。

そういうことなのだろう。

「よし、じゃあ戻りましょうか。…気になるとは思いますけど、学院長本人には黙ってるってことで」

「分かった」

学院長に隠し事をするのは、あまり気が進まないけど。

噂の真偽も分からないのに、問い詰めることも出来なかった。

…でも…。

「あ、君達!何処行ってたの?も〜!」

「…」

「幽霊との和解チョコ、何が良いと思う?フォンダンショコラ?チョコドーナツ?幽霊って、どんなチョコが好きなのかなぁ」

学院長室に戻るなり。

至って真剣な眼差しで、お化けにお供えするチョコレートについて、意見を求めてくる学院長を見ると。

この人が本当に心変わりしたなんて、とても思えない。

…お化けって、チョコ好きなのかな?

もし学院長が死んでお化けになることになったら、そのときはチョコレートを供えておこう。

一瞬で成仏しそうだ。

「…」

僕達四人は、いつも通りの学院長の姿を見て、互いに顔を見合わせた。

様子がおかしいようには、見えないけど…。

『八千歳』や不死身先生の言う噂って、本当なんだろうか…?

本当なのだとしたら、今ここに…僕達の目の前にいる学院長って、一体…。