神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

向かった先は、職員室。

ここまで来れば、羽久や、学院長本人にも聞かれずに済む。

「一体どうしたの…?」

天音だけは事情が分からないみたいで、首を傾げていた。

大丈夫。僕も、事前に『八千歳』に聞かされてなかったら、きっと同じく首を傾げていただろうから。

「ナジュせんせーは分かってると思うから、ズバリ聞いちゃうけどさー…。…学院長せんせーの様子がおかしいって噂、あれ本当なの?」

と、『八千歳』が尋ねた。

「えっ…。学院長先生の様子がおかしいって?」

不死身先生が答える前に、天音がびっくりして声をあげた。

不死身先生の意見を聞く前に、まずは、天音に説明するのが先だね。

「『八千歳』が糸魔法で情報収集してたら、お化けの噂に加えて、最近学院長の様子がおかしいんじゃないか、って噂も広まってるらしいよ」

と、僕は天音に説明した。

天音が信じるかどうかは、別の話。

「学院長先生の様子が…?確かに…最近は幽霊騒ぎのせいで、随分挙動不審になってるみたいだけど…」

「いや、それとは別にさ。なんか真面目になったんじゃないかって噂されてるんだよ」

「…真面目…?」

ますます、傾ける首の角度が大きくなっていく天音。

そっか。やっぱり天音も、そう思うか。

僕もだよ。

あの学院長の様子を見たところ、おかしいようには見えない。

至っていつも通りだよね。

すると。

「僕も気になってたんです。生徒の心を読むと、学院長が真面目になったとか、学院長が心変わりしたとか…そんなことを考えてる生徒が、一定数存在してまして」

と、不死身先生が言った。

『八千歳』に加えて不死身先生も、その噂を知っていた。

じゃあ、本当なんだ。

生徒の間で、学院長の様子がおかしいって噂が流れてるのは、本当なんだね。

「それ、どういうこと…?学院長先生が心変わり…?」

「僕にもよく分かりません。でも、生徒が嘘をついている訳じゃないことは、心を読めば分かります」

誰だって、嘘を噂話にはしたくないだろうからね。

噂をする生徒達は、本当に学院長の様子が変になったって思ってるんだ。

「そんな…。僕の目から見たら、学院長は普通だけど…」

「僕の目から見ても、普通ですよ」

「俺も。何なんだろーね?あの噂…」

「…」

ここにいる四人の目から見て、学院長は何ら変わりない。いつも通りの学院長だ。

それなのに一部の生徒は、学院長が真面目になった、心変わりしたと噂している。

その噂には、何らかの根拠があるはずだ。

最初に黒い影を目撃した人が、目撃情報を流したように。

学院長の心変わりについても、最初にそれを見つけた人がいるはず…。

それが誰なのかは、残念ながら分からない。