…しかし。

「きっと大丈夫だよ、あの子達なら」

疲労が色濃く滲んだ顔つきだったが、それでもシルナは、微笑んでみせた。

…シルナ…。

「心配しなくても大丈夫。信じて待ってよう」

「…分かったよ」

ほんの僅かな時間、離れていただけだってのに。

既に、積もる話は山ほどある。

この先にあるという、お茶会の会場で…先に待っていてくれる。

そう期待して、俺達は薔薇のアーチを潜り抜けた。

そこには、成程、お茶会の会場があった。

大きなテーブル。そのテーブルを囲む人数分の椅子。

テーブルの上には、何故か不自然なほど大きな皿が、いくつも並べられていた。

でっかい皿…。余程大量の菓子を並べるつもりらしい。

とびきりのお菓子、って言ってたもんな。

…そんなことより。

「…!」

誰かが待っていてくれる、と期待していた。

しかし、そこにはまだ…誰もいなかった。

…俺達が一番乗りなのか。

ますます不安になるから、そういうのは遠慮して欲しかった。

「…大丈夫だよ、羽久。大丈夫」

空席まみれのテーブルを見ても、シルナは動じなかった。

「きっと、今にやって来るよ」

「…そうか…」

…そうだったら良いんだが。

もし誰か一人でも揃わなかったら、さっきのトランプ兵と、ハンプティ・ダンプティを脅してでも、迎えに行こう。

ルール?知ったことか。

仲間の命より大事なものがあるかよ。

…と、思ったそのとき。

「…あら、あなた達。先に来ていたんですか」

「…!」

聞き慣れた声がして、俺とシルナは、がばっと振り返った。

そこには、腕組みをしたイレースが立っていた。

…思わず、安堵の溜め息が溢れるところだった。

「イレース…!無事だったんだな?」

「イレースちゃんも、招待状を手に入れられたんだね。良かった…」

「当然です。こんな玩具の魔法道具にやられる私ではありません」

いつも通りの、不遜な口調さえも懐かしい。

良かった。やっぱり俺達だけじゃなかった…。

イレースも、無事に…。

…すると、そこに。

「あっ、学院長先生。羽久さん、イレースさんも…」

「天音…!」

イレースに続いて、天音が薔薇のアーチを潜り、お茶会の会場にやって来た。

続々来る。続々来てるぞ。

良かった。天音も無事だった。

「三人共…無事で良かった。ナジュ君や…あとの二人は?」

「まだだ。でも…あいつらなら…」

きっと、今にやって来るはずだ。