神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

裏切り者…『M.T.S社』という、その組織の拠点に辿り着くなり。

僕の「お仲間」は、真価を発揮した。

「お邪魔しまーす」

と言いながら、漆黒の鎌を一振り。

建物の入り口を破壊し、堂々と正面から入っていった。

なんという、ダイナミック入室。

いっそあっぱれ。

「…はぁ、やれやれ…」

どうやらこのダイナミック入室は、ルレイアさんの常だそうで。

ルルシーさんは溜め息をつきながらも、相棒を止めようとはしなかった。

仲良しなんですね、本当に。

「さて、やりますか」

ぐるぐると鎌を回し、まさに死神然として敵に襲いかかるその姿は。

不死身じゃなかったら、逃げ出したくなるほどに恐ろしかった。

何なら、この人なら僕を殺せるのでは?と思うほど。

まぁ…それは無理なんですけど…。

「おい、ルレイア。張り切るのは良いが、皆殺しにはするなよ」

「えー」

皆殺し、という物騒な言葉が、当たり前のように飛び交う職場である。

何で残念そうなんですか?

「リーダーと…幹部の一人や二人は、生かして捕らえる。聞きたいことがあるからな」

「仕方ないですね…。分かりましたよ。努力はしますが、うっかり鎌が滑ったら、保証は出来ませんね」

「全く…勢い余るんじゃない」

勢い余って鎌が滑る。そんなことあります?

この人達の生きている常識についていけないよ。

すると。

「俺とルルシーは、最上階を目指しますよ。ルーチェスは、この奥にある武器庫を制圧してもらえますか」

と、ルレイアさんが指示した。

武器庫の制圧とは。

かなり重要な…かつ、危険な役割を担わされてしまった。

本当、この人と来たら…。

…まぁ、良いですけど。

ボロを出したら困るから、単独行動の方が気を遣わずに済むし。

何なら僕、不死身ですから。恐れるものは何もない。

「分かりました。行ってきます」

「宜しくお願いします」

この人達が見ていないところなら、魔法も使えますしね。

まぁ、何とかなるでしょう。

イーニシュフェルト魔導学院の教師ともあろう者が、魔法も使えない素人の一団に良いようにあしらわれた、なんて。

さすがにプライドが許さないので。頑張りますよ。

しかし。

「おいおい…。ルーチェス一人でか?大丈夫なのか?」

心配性らしいルルシーさんが、決定に口を挟んできた。

「順番に制圧した方が良いんじゃないか?まず武器庫を制圧して、それから上に…」

「そんなのんびりしてちゃ、奇襲した意味が無いじゃないですか。逃げられちゃいますよ?」

「それは…。でも、ルーチェス一人に負担をかける訳にはいかないだろ」

わお。

随分と、優しい同僚をお持ちのようで。

イレースさんにも見習って欲しい優しさですね。