神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

…ルレイア、って言ったっけ?
 
…この人…本当に只者じゃない。

まだ何もボロは出していないはずなのに…僕の正体に気付い、

「それより、そろそろ任務の時間だ。出掛けるぞ」

僕とルレイアさんの間で、一瞬だけ、緊迫した睨み合いが勃発しかけたが。

良い感じに空気を読まず、ルルシーさんが割って入った。

無意識なんだろうが、ナイスフォローだ。

「…任務?ありましたっけ?」

ルレイアさんが、きょとんと首を傾げて言った。

…。

「あのなぁ、ルレイア…。忘れるなよ。昨日言ったろ?うちの傘下の、『M.T.S社』だよ」

「あー。なんか、そんな組織ありましたねぇ」

「この前から話してただろ?」

それは…。

裏社会の組織として許されざる裏切りですね。

あ、成程。だから裏切り者の粛清なのか。

「怪しげな秘密兵器を研究してる、って噂もある」

…怪しげな、秘密兵器…?

それはまた、随分と胡散臭い…。

だが、ここは『不思議の国のアリス』の世界。

その名の通り、どんな不思議な出来事が起きても、おかしくはないだろう。

何せ、『白雪姫と七人の小人』のときは、白雪姫が巨大りんご砲をぶちかましてきましたから。

「へぇ、秘密兵器ですか…。それって、俺の死神の鎌より強いんですかね?」

「いや、それは…どうなんだ…?」

秘密兵器と聞いて、怯えるどころか、にやりと不敵に笑うルレイアさん。

向かうところ敵なし。

「腕が鳴りますね。どんな敵が待っているのか…」

「お前なぁ…不確定情報とはいえ、警戒しておくに越したことはないんだぞ」

「俺達が揃えば、どんな相手でも敵じゃありませんよ」

さすが。

マフィアのお偉いさんは、貫禄が違うな。

「じゃ、早速行きましょうか。俺達を裏切ったこと…精々後悔させてやりましょう」

何とも心強い。

もしかして、僕要らないんじゃないかと思ってしまうほどに。