神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「苦しゅうない、苦しゅうない」

僕はひらひらと手を振ってそう言った。

こうやって、すぐ調子に乗るスタイル。

「それよりお兄さん、ちょっと聞きたいことがあるんですが、良いですか?」

近くにいた強面のお兄さんに、そう言って声をかける。

「はっ、何でしょう?」

「…僕の今日の仕事って、何でしたっけ?」

「え?」

いや、そんな首を傾げないでください。

別に記憶喪失になった訳じゃないから。

「僕、今日何か予定入ってましたよね?」

裏切り者の粛清、ってセカイお姉ちゃんは言ってたけど。

もう少し、具体的な情報が欲しい。

「は、はぁ…。確かルーチェスさんは今日、午後から、ルレイアさんとルルシーさんを合わせて、極秘の任務に出掛けられるとか…」

「極秘の任務?」

「も、申し訳ありませんが…それ以上のことは、自分も…」

ご存知ない、と。

そりゃそうか。極秘の任務なのに、こんな末端構成員が知ってたら、極秘でも何でもない。

ぐるりと周囲を見渡し、他の構成員の心を読んで確認してみたところ。
 
ここにいる全員、この極秘任務の内容を知らないようだ。

ふむ。

じゃああとは、自分で調べるしかなさそうだ。

これ以上不審なことを聞いてしまったら、「deceive me」の指示に反する恐れもある。

しかし、午後からか。

現在の時刻は、まだかろうじて午前だ。

遅刻せずに済んで良かった。

「そうでしたか。いえ、ちょっと気になっただけです」

「は、そうですか…」

だから、そんなに不審がらなくても大丈夫です。

…おっと、ついでに。

さっきの情報を、もう少し詳しく。

「ルレイアさんとルルシーさんは、今どちらに?」

僕、今日その人達と極秘任務に出かけるんだろう?

パーティーの仲間は、確認しておかなくては。

誰なのかは知らないけど、いかにも強そうな名前だ。

お偉い人なのだろうか。

「お二人は…いつも通り、ルルシーさんの執務室にいらっしゃると思いますが…」

「そうですか…。分かりました」

執務室…執務室ね。

こんな広くて巨大なビルの中で、目的の一室を探すのは、骨が折れそうだ。

通りすがりのモブの皆さんに聞きながら、何とか辿り着くとしよう。