神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜

「ルーチェス君に届いたお手紙なら、私は見てないよ?」

…とのこと。

成程。

…嘘では、ないようですね。

口で嘘をつくのは簡単だが、心に嘘はつけない。

「そうですか…」

セカイお姉ちゃんは、ご存知ではない…と。

まぁ、そんなに簡単ではないよな。

この様子じゃ、セカイお姉ちゃんは招待状のことも、アリスのことも、何も知らなさそうだ。

よし、分かった。

「分かりました。こちらで何とかします」

「そうなの?大丈夫?」

「大丈夫ですよ」

大丈夫にするんですよ。いつも通りね。

…すると。

「…それで、ルーチェス君。今更なんだけどさ」

「はい?」

「お仕事、大丈夫なの?遅刻してない?」

…仕事?

元の世界では、僕教師なんですけど。

この世界では僕、何の仕事をしてるんですか?

「今日は、裏切り者のしゅくせーに行くんだ、って昨日言ってたじゃん」

「…」

…めちゃくちゃ物騒な言葉が出てきたんですが。

本当に僕、何の仕事してるんですか?

怖っ。

「それは…」

セカイお姉ちゃんの心を読んで、僕は瞬時に状況を把握した。

…。

「…ふふっ」

思わず、笑ってしまった。

成程。めちゃくちゃ物騒なことしてるんですね、僕。

「ふぇ?どうしたの?」

「いえ、ちょっと…。ついね」

全く、僕と来たら。どんな世界に来ても、波乱万丈な人生を送らずにはいられないらしい。

そういう性、運命、星の巡りなんですかね。

はいはい、分かりました。 

あの文字…「deceive me」の意味が、少し分かった気がする。

この世界での僕のポジションを、上手く演じ切れ、ってことでしょう?

それで元の世界に戻れるなら、お安い御用ですよ。

「心配しなくて大丈夫ですよ。…上手くやりますから」

「そっか…。さすがルーチェス君だね」

そうでしょう?

好きな人の為なら、死ぬ以外のどんなことでもする覚悟ですから。

伊達に不死身の身体をやってきた訳じゃない。

…故に。

演じてみせますよ。

仲間達に…本物のリリスに再会する為に。

「…ところで、セカイお姉ちゃん」

「ん?何?」

「つかぬことを聞くんですが…僕の職場って、何処にあるんですか?」

「…」

ポカン、とこちらを見つめ返すセカイお姉ちゃん。

あれ?記憶喪失?と思っているんでしょうが。

まぁ、あながち間違ってはいない。